イラクから虚しく撤退した米軍のあとで、結局、米国はイラクをイランに売り渡すのか
第二次大戦でルーズベルトは、シナを赤化させてしまった。シナの市場という、最大の戦争目的を失い、あげくに朝鮮半島で多大な犠牲を強いられた。
それでも懲りずにケネディはベトナムに介入し、結局ハノイの共産党が勝った。米国とフランスが支援したゴジンジェム、グエンバンチュー政権は腐敗した。敵と戦う能力に恵まれず、実質は米軍がかれらを腐敗させたのだ。
誰がシナを失わせたか。誰がベトナムを? 米国歴史上で、奇妙に高い評価が与えられているルーズベルトとケネディが犯人ということになる。
イラクへ介入して八年。追加戦費は1兆ドル。アメリカの若者ら4500名が犠牲となり、イラク国民十万余が死んだ。米ドルは150円から70円台に減価し、イランの核武装には指をくわえて見ているだけとなった。
オバマ政権となってイラクからの撤兵はスケジュール通りとなり、米軍は追われるように、こそこそと逃げ出す不名誉を演じざるを得なくなった。最後の撤収は午前二時にイラク側に内緒で行われた!砂漠を疾駆してクエートへ最後の部隊は去った。
これからイラクはどうなるか?バグダッドに蝟集する各派連立の暫定政権はエリートの集まりだが、誰一人として、サダム時代のように政権を掌握できず、つまり政治力が乏しい。
▲マリキ政権は傀儡なのに独立を演出し、シーア派とは妥協だらけの二流政治
サダム政権のバーツ党エリートよりお粗末だった。しかも、かの民主化を唱えてエリートも米軍の支援態勢のもとで、まるまると私腹を肥やすほどに腐敗した。
かの米国傀儡といわれるバグダッドの政権は独立的立場をことのほか演出し、シーア派とは妥協だらけの二流政治家である。
スンニ派は少数派であり、イランの影響を強くうけるシーア派がいずれイラク政治をおさえるだろう。北部のクルド族との内乱は、いずれ本格化するだろう。イラクは再び血と騒乱の巷となるだろう。しかし米国は介入しないだろう。
アフガニスタンは繰り返し予測してきたように「タリバニスタン」となり、最大の問題はパキスタンの民主政権(「まがい」だが)が崩壊の危機に瀕しており、もしパキスタンがイスラム原理主義政権めざす過激派との内乱に発展した場合、核兵器の拡散が避けられなくなるだろう。
オバマ政権はしかし、そうした米国の不名誉と事実上の敗北に無関心である。かれはたぶん再選されないが、まだ一年以上の任期が残っている。つまり米国の撤退と不名誉は続行するのである。
こうして米国の知識人等の最近の論潮は悲観的、絶望的、マイナス思考のものが多い。景気後退と重複し、全米の気運が晴れていない証拠でもあるのだろう。
杜父魚文庫
8834 米国知識人を襲う無力感 宮崎正弘

コメント