北朝鮮は厳寒の季節に入った。食糧もなく暖房用の灯油もない。それだけでも国民の不満が鬱積する。二十八歳の若い金正恩の手にあまる社会情勢になっているのは間違いない。これを乗り切るには金正日時代よりもさらなる強権政治で国民の不満を抑え込むしかない。少なくともこれからの数ヶ月は厳しい国民監視の”憲兵政治”が行われるだろう。
そんな北朝鮮の危うさを中国は敏感に感じ取っている。韓国の東亜日報は楊外相が電話で韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商部長官に「金正日総書記が死去した北朝鮮を刺激しないよう」求めるメッセージを伝えてきたという。
別の筋によれば、金正恩を支える軍官僚が李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長、金英徹(キム・ヨンチョル)軍偵察総局長、金格植(キム・ギョクシク)前第四軍団長ら強硬派になったことに、中国は懸念を持っているという。
昨年の黄海北方限界線(NLL)の延坪島に対する奇襲砲撃事件は、この李英鎬・金英徹・金格植ラインが主導したといわれている。国内の不満と不安定を第二、第三の延坪島事件で目をそらすことが考えられる。それは中国にとって好ましいことではない。
北朝鮮を”刺激しないように”という楊外相の訓戒調メッセージは、ここにきて北朝鮮の金王朝に不協和音が生じているなど、西側の情報が飛び交う中で北朝鮮が冒険主義的な軍事行動に出ることを怖れていることを窺わせる。
<中国が楊潔?外相を通じて韓国政府に、金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去した北朝鮮を刺激しないよう求めるメッセージを伝えたという。中国は、米国と日本政府にも同じメッセージを送った模様だ。
韓国政府筋は22日、「楊外相が、20日にあった金星煥(キム・ソンファン)外交通商部長官との電話会談で、このような趣旨のメッセージが伝えたようだ」とし、「金総書記の死去後、北朝鮮政権の安定性を憂慮した中国が、北朝鮮に対する影響力を拡大するために、本格的な『北朝鮮への肩入れ』に乗り出した」と分析した。
別の消息筋も、「楊外相が金長官に『韓半島の安定と平和を害する措置に同意しない』と強いトーンで言及した」と伝えた。このような強硬な発言に政府は大変に当惑したという。「北朝鮮を刺激するな」というメッセージは、傲慢な「中華外交」の発露という批判も出ている。
このような中国の態度は、金総書記死去を機に、北朝鮮に対する影響力を拡大するため、北朝鮮に密着していることを示している。中国は、韓国、米国、日本にこのような訓戒調のメッセージを送りながらも、金総書記の死去に対応するための首脳間協議には一切応じていない。
韓国政府はひとまず、中国のこのような態度を「中国が自分たち(北朝鮮)を差し置いて、韓米日と結託するのではないか」という北朝鮮の疑念を憂慮した振る舞いと見ている。しかし一部では、「国際社会の責任ある大国としての態度ではない」という批判が出ている。中国が北朝鮮への関与を拡大する場合、対北朝鮮政策の主導権確保を図る韓国政府の政策にも赤信号が灯らざるを得ない。
こうした状況のなか、韓国政府は、金総書記の死去から3日が経過した22日、林聖男(イム・ソンナム)外交部韓半島平和交渉本部長を中国に派遣した。林本部長は、武大偉・韓半島問題特別代表ら関係者と会談し「金正恩(キム・ジョンウン)時代」の北朝鮮情勢と6者協議の再開について話し合う予定だ。(東亜日報)>
杜父魚文庫
8841 「北朝鮮を刺激するな」と中国が訓戒調メッセージ 古沢襄

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