やっぱり地対空携行ミサイル5000発が過激派へ流れ出ていた。スティンガーミサイルがイスラム過激派を含む世界の武器の闇マーケットへ。
リビアの独裁者カダフィは消えたが、残留兵器という軍事的脅威は去っていない。カダフィが買い集めた地対空携行ミサイル(米軍のスティンガー、ロシア製SA24=マンパッドを含む)は、およそ二万発。
大半はスカッド型のSA-7。これらはカダフィがロシアや崩壊した東欧圏の軍事組織の横流しを輸入したものである。
このうち、およそ五千発がいまも行方不明のまま。カダフィ政権崩壊直後のNATO専門家の調査では「あらかたが発射されたか、破壊された」と報告されていた。しかし残余の一部が世界のブラックマーケットに出回っているらしい。
スティンガーの威力は嘗て米国がパキスタン経由でアフガニスタンの「聖戦の戦士」らに供与し、ロシアの武装ヘリ(ミル・ハインド等)を片っ端から墜落させたことでも知られる。
持ち運びが簡単で肩に担いで、飛んでいる飛行機を打ち落とす。ゲリラが入手すれば、正規軍の空爆も効果を減殺されてしまう。
米軍のほこるアパッチヘリも機敏な行動がとれなくなり、げんに欧米多国籍軍がアフガニスタンのタリバンを制圧できず、無人機を飛ばすのはスティンガーを大量にアフガンゲリラが保有しているからである。
かつてアフガニスタンゲリラはロシア軍隊が去った後も、米軍が提供したミサイルを返却せず、困り果てた米国はカネをだして買い戻した。
▲米国は脅威を除去するためにミサイル買い戻しを提示
しかし多くは闇のマーケットに流れ、とりわけイスラム過激派のネットワークが、闇の武器市場から調達した(思い出した。1985年ヨハネスブルグで開催された世界青年年の反共組織世界大会に出席した折、アフガンゲリラの代表が登壇し、「勝利のあと、ウニタなどアフリカの反共下リア諸兄にも、余剰ミサイルを供与する」と発表したことを)。
リビアでも同様な計画を米軍は進めており、5000発と見積もられるスティンガーミサイルを買い戻すために4000万ドルの予算を計上した形跡があることが分かった(NYタイムズ、12月24日)。
しかしこれらカダフィのミサイルは正式な輸出品でもなく、「買い戻し」という形式では議会の反対も予測されるので、技術支援のかわりにリビア暫定政権が廃棄するというかたちになるかもしれない。いずれにしてもリビア暫定政権は、ミサイル代金の値上げを考慮しているという。
杜父魚文庫
8842 カダフィの地対空ミサイルが過激派ゲリラの手に 宮崎正弘

コメント