はやくもレイムダック入り? 霞む霞む、胡錦涛の政治指導力。習近平はベトナムとタイへ。薄き来は堂々の政治局入り闘争。温家宝は独歩路線。
中国の権力中枢は中南海。これほど珍しくリーダーシップ総崩れ。まとまりがない。汚職の根絶が出来ない。腐敗官僚の跋扈を取り締まれない。社会不安の沈静化に決定打がない。
「あの男は江沢民より無能だった」中国の多くの知識人の胡錦涛評価だと言う(米国ジェイムズタウン財団『チャイナ・ブリーフ』、12月20日号)。
(それなら野田某と似ていなくもない)。
かくして胡錦涛政権のレイムダック入り。中国の基本政策はすべて先送りされ、2012年秋の十八回共産党大会で総書記となる習近平の「就任演説」がどうなるか、専門家の注目が集まるのも、自然といえば自然だろう。軸足を変更する可能性もあるだろう。江沢民は「三つの代表」、胡錦涛は「和諧社会」をスローガンとしたように。
なにが胡錦涛を優柔不断、決断力のない無能男という評価に追い込んだか?
政権発足当時、温家宝首相と二人三脚でポピュリズムを演出し、SARS、災害危機を乗り越えた。積極的に医院を見舞い、被災地へでかけ、人民を励ました。現場の人々を鼓舞した。このポピュリスト路線は、庶民に漠然と好感されたが、党における権力はすこしも確立されなかった。温家宝首相のみが、うきあがってこの路線を踏襲したが、党の高層部は眉をひそめる。
▲中国もまた「失われた十年」だったのか?
江沢民はなりふりかまわず軍高官に取り入り、自派を形成して権力を盤石としたが、胡錦涛は派閥党争のノウハウさえ知らないように、団派の扶植に勢いがなかった。
所詮、エリート、党のテクノクラート集団がやる程度の限界と言われたら、それまでのことである。
この優柔不断な印象の対極を演出し、庶民の味方でありリーダーシップがあり、しかも左派イデオロギーを前面に出した、堂々と中枢入りの野心を示したのが重慶書記の薄き来だった。
かれは毛沢東の原点にかえろうと行って貧乏庶民や中産階級のインテリ層も取り込んだため、次期首相の李克強よりはるかに政治力に富むと中産階級の知識人等が認識をかえた。薄は「薄沢東」という新しいニックネームがついた。
李克強副首相は次期首相の座を王岐山に正面から脅かされている。経済路線でふたりは対立している。国際的に信用があるのは、どちらかと言えば王岐山のほうであり、李克強も胡錦涛ともども沈む可能性がある。
結局のところ、党テクノクラート集団は頭でっかち、秀才そろいだが、修羅場に弱く、戦争のやりかた(権力闘争の裏技)を知らない。軍を掌握できないままの十年、或る知識人はこの状況を「失われた十年」と比喩した。
杜父魚文庫
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