8895 アイオワで割れた米共和党、オバマ再選に追い風か   古沢襄

英フィナンシャル・タイムズ紙はアイオワ州で米共和党の指名争いが紛糾し票が大きく割れたことで、オバマ大統領の再選に追い風になったと分析している。
お祭り騒ぎになる米大統領選挙は、十二月までのロングランになるので、アイオワだけをみてオバマに追い風と断じるのは早トチリの観があるが、共和党の右寄り保守派が乱立している状況はマイナス要因であるのは確かだ。その間隙を縫って中道保守派のミット・ロムニーが辛勝した。
共和党が大統領選挙でオバマに勝つには、中道票を集められるロムニーにしか目がないと早くからいわれてきた。フィナンシャル・タイムズは「どう見ても、ロムニー氏は共和党の大多数の興味を引かない。この状況は今後も変わらないだろう」と斬り捨てた。
最近のロムニーの動向についてウキペデイアが次のようにまとめている。
2012年大統領選への再出馬が取り沙汰される中、各種世論調査でも高い人気を集めて有力候補の一人として位置づけられていたが、2011年4月には大統領選の準備委員会設立を発表し、事実上の出馬表明をした。
2011年夏から共和党指名獲得レースが本格化、有力候補が激しく入れ替わる混戦の様相を呈する中、ロムニーは相対的に安定した支持率を保ったまま終盤を迎える。しかし穏健派として保守派の支持拡大が課題となっている点は前回と同じであり、特に共和党が党を挙げてオバマ政権の国民皆保険導入を批判する中で、前述のマサチューセッツ州知事時代の州皆保険導入の実績を批判されることが多い。
特に党内で影響力を拡大したティー・パーティーから猛烈な攻撃を受けている。一方で経済政策などの評価は高く、ウォール街からも全面的な支持を受けており、資金面では他の候補を圧倒している。また、本選でオバマに勝てる候補として中道寄りのロムニーを本命視する向きが強い。
予備選の初戦となった2012年1月4日のアイオワ州の党員集会では、2位のリック・サントラム元上院議員を8票差で下し、勝利を手にした。
<アイオワ州はバラク・オバマ氏の幸運のお守りかもしれない。4年前に、オバマ現大統領が民主党の大統領候補指名に向けて大躍進を始めたのがアイオワ州だった。それだけでなく、1月3日夜の共和党指名争いが紛糾し票が大きく割れた結果から判断すると、アイオワ州はオバマ大統領が再選を心に描き始める場所になる可能性が十分ある。
■人気低いロムニー氏、盛り上がらない投票
アイオワ州で最初に遊説してから5年経っても、前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏の得票率は25%どまりだった。実際、今回の選挙でロムニー氏が獲得した得票数は、同氏が2008年にマイク・ハッカビー氏に次いで2位につけた時の得票数3万票をわずかに上回る程度だった。
どう見ても、ロムニー氏は共和党の大多数の興味を引かない。この状況は今後も変わらないだろう。
次に、2012年は共和党の有権者にとって「非常に緊迫した」年になると予想されてきたにもかかわらず、アイオワ州の投票結果はそうではないことを示唆している。党員集会の参加者は約12万人で、投票率は2008年と全く変わらないと言っていい水準だった。これに対し、2008年に民主党のアイオワ州党員集会に参加した人は20万人を超えていた。
3番目に、この5日間でリック・サントラム氏が見せた目がくらむような躍進ぶりは、今回の気まぐれな共和党指名候補争いで、まだジェットコースターのような急展開が起こり得ることを示している(我々はもうハーマン・ケイン氏のことを忘れてしまったのだろうか?)。
■漁夫の利を得るサントラム氏
多くの識者は、ロムニー氏が1月10日のニューハンプシャー州予備選に勝つと見ている。だが、1月下旬に行われるサウスカロライナ州予備選で勝てるかどうかは疑わしい。
テキサス州知事のリック・ペリー氏は、アイオワ州で5位に終わるという冴えない結果にもかかわらず、サウスカロライナ州予備選に出ることを決めた。だが、昨年8月のアイオワ州模擬投票で勝利を収めながら、党員集会では一転して6位に終わったミシェル・バックマン氏は、選挙戦からの撤退を表明した。サウスカロライナ州予備選でバックマン氏に投票したかもしれない社会保守派の票は、サントラム氏に流れる可能性がある。
さらに、アイオワ州党員集会で4位となり、何とか選挙戦を続けられることになったニュート・ギングリッチ氏は3日夜、ロムニー氏による「雪崩のようなネガティブキャンペーン」に対して報復に出る計画を示唆した。こうした攻撃の応酬はロムニー、ギングリッチ両氏に害を及ぼし、おそらくはサントラム氏を利することになるだろう。
■消去法で残るロムニー氏
サントラム氏が指名を獲得する可能性は依然、極めて低い。資金力がないし、共和党の支配層は同氏が指名候補になる見通しにおじけづくはずだ。また3日の党員集会で、21%の得票率で堂々3位につけたロン・ポール氏が指名候補になることもあり得ない。どちらかが候補者に決まれば、オバマ大統領の勝利が確実になる。
そうなると、残るはロムニー氏だ。先週はロムニー氏が1月末までに指名争いでの勝利を確定するという展開を想像することもできた。今ではもっと長い時間と多額の資金がかかることになりそうだ。(フィナンシャル・タイムズ)>
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました