オバマ新軍事戦略へのアメリカ側での批判や疑問の紹介を続けます。原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34274
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「オバマ大統領は、『同盟諸国との共同作業を強める』ことによって、アジア・太平洋での中国の軍拡への抑止力を強化すると再三述べているが、その同盟相手である韓国も日本も米国との防衛協力の拡大にはまったく意欲を見せていない。むしろ難色を示すという感じである」
「米韓同盟の従来の有事計画では、北朝鮮が韓国を全面攻撃した場合、米軍は韓国支援のために地上部隊69万人、駆逐艦160隻、軍用機2000機 を90日以内に動員して現地に投入することになっている。だが、オバマ大統領の新戦略では、その規模の戦力の投入には全世界の米軍部隊を動員しなければならなくなってしまう。つまり、この有事支援は現実には不可能だということになる。その展望に米国がどう対処するかについては、まったく不明である」
この指摘はアジア作戦だけに焦点を絞っての、極めて具体的な疑問の提起である。
オバマ新戦略の元となる米国の「国防戦略見直し結果報告」は、確かに中国への対応を具体的に述べている。「中国やイランは、サイバー攻撃や弾道ミ サイルなどの非対称戦力で米軍の展開に対抗する手段を追求している。米軍の接近を阻む戦略に効果的に対処するため、ステルス爆撃機の開発やミサイル防衛能力を向上させる」という記述である。
だが、この具体的な措置を、どのような財政措置で、さらにはどの部隊によって実現させるのかとなると、今のオバマ政権の発表は極めて曖昧なままなのだ。
さらにオバマ政権が当てにする「同盟諸国との協力」も、「最初にスローガンありき」の観が否めない。特に日本側の防衛政策の実情を見ると、米国が 期待するような対中抑止策に意味のある協力ができるという見通しはまず浮かんでこない。だからクリングナー氏の指摘は的を射ていると言えそうだ。
こう見てくると、単にアジアの重視だとか中国への抑止強化だという側面だけではオバマ新戦略を評価できないことが明白となってくる。しかも、その「重視」や「抑止」を具体的にどう実行するのか、その明確な提示も現段階ではないのである。(完)
杜父魚文庫
8919 オバマ新戦略では朝鮮有事に対応できない 古森義久

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