8974 05年以来の強力な太陽嵐が地球を襲う  古沢襄

このところ異常気象が地球を襲っていると感じるのは私だけであるまい。米AP通信は海洋大気局(NOAA)の宇宙天気予報センター(SWPC、コロラド)のデータをもとにして、太陽は六年以上ぶりの強力な嵐による放射線で地球を爆撃している・・・と報じた。
二〇世紀末に地球を襲う異常気象について様々な解説がメデイアを賑わしたことがある。いわゆる世紀末の地球大崩壊論だが、それほど大げさなことではなくとも、1976年夏の日本列島は数百年来の冷夏に襲われ、気象学者の根本順吉氏は気象学のデータを使って、人類の繁栄をもたらした第四間氷期がすでに終わり、地球史上五回目の氷河時代に突入しつつあるとショッキングな見解を公表したことがある。
その理由を根本氏は次のように示した。
①間氷期は氷河期にくらべてきわめて短く数万年程度である。最後の間氷期からすでにおよそ一万年を経過しており、現在は大勢としても寒冷化の時代にあたっている。
②気候の体制の変化は比較的急激であり、数千年程度の規模の現象なら数十年、数万年程度の規模の現象なら数百年の間に気候が別の体制に移り変わり得る。
③最近しばしば安定した形で持続する北半球の気圧配置が、氷河時代の気圧配置とよく似た型になっている。
そして人類の生存に深刻な影響を与える大氷河期の到来は、早くとも数世紀、遅くとも二〇〇〇年から三〇〇〇年後のこととしても、気候変動と環境変化をともなう第四小氷期の対応策・・・つまりは食糧問題をもっと深刻に考える時期にきたと警鐘を鳴らしている。
それでは地球の温暖化と寒冷化の原因は何だろうか。根本氏は①地球軌道面の変化②太陽活動との関係、黒点などを挙げた。それも太陽そのものの活動に大きな原因があるというのが、世界の気象学者の一致した見解である。
1957年の国際地球観測年で世界中の気象学者が協力して、地球全体を観測し、診断することを始めた。こうして分かったことは、地球が全体として着実に気温低下を続けていることで、さらにこれを太陽活動のグラフと重ね合わせると、細部のデコボコにいたるまでよく一致していることが確認された。
1964年あたりを境にして太陽活動はがぜん弱くなっている。この太陽活動の弱い時期は2015年まで続くとみられている。このような根本氏の見解を下敷きにして。今回の米NOAAの見解を読むことが必要である。
<【ワシントン】太陽は6年以上ぶりの強力な嵐による放射線で地球を爆撃している。急速に移動する爆発からの攻撃は強まると見られる。
太陽フレアは米東部時間22日午後11時(日本時間23日午後1時)ごろに発生し、三つの異なった時刻に、三つの異なった形で地球を攻撃することになる。米海洋大気局(NOAA)の宇宙天気予報センター(SWPC、コロラド)によると、最大の問題は放射線だ。
放射線は宇宙空間における衛星と宇宙飛行士にとって問題となる。SWPCのダグ・ビーセッカー氏によると、地球の極地を飛行する航空機の通信障害を起こすことがある。
22日のフレアからの放射はその1時間後に地球に到達し、これが25日まで続く公算が大きい。そのレベルは強いと見られるが、他の嵐はもっときつかった。NOAAの嵐スケールでは「激しい(severe)」と「極度の(extreme)」の二つがある。同氏によれば、それでも今回の嵐は2005年5月以来最大のものだという。
放射線―プロトンの形での放射―は時速9300万マイル(1億4900万キロメートル)のスピードで太陽から飛び出てくる。
米航空宇宙局(NASA)の広報担当者によると、NASAの航空医師や太陽の専門家は太陽フレアの予想される影響を調べ、国際宇宙ステーション(ISS)にいる6人の宇宙飛行士は放射線からの保護のために特別なことをする必要がないとの判断を下した。
NASAの宇宙飛行センターの物理学者アンティ・プルキネン氏は、ワン・ツー・スリー・パンチが太陽の爆発に続いて起こると述べた。第1が電磁波で、第2がプロトンの形での放射線、そして最後がコロナガスの噴出で、これは太陽からのプラズマだ。通常これは時速100万マイル(160万キロ)あるいは200万マイル(320万キロ)の速度で動くが、今回の嵐の速度は特に速く、時速400万マイルに上る、とビーセッカー氏は話している。
地球に目立った問題を引き起こすのはプラズマで、配電網の障害などがそれだ。1989年にはカナダ・ケベックで大規模な停電が発生した。オーロラが南の地域でも見えることがある。ただ、今回のコロナガスの噴出は穏やかなものになる公算大だが、強力になる可能性もある。嵐の最悪の影響は地球の北部で見られる公算が大きい。
米南部のアラバマ州でもオーロラが見えた昨年10月の珍しい太陽嵐とは異なり、今回はオーロラが南部でも観察できるということはなさそうだ。ビーセッカー氏によると、ニューイングランド地方やニューヨーク州北部、ミシガン州北部、モンタナ州、太平洋の北西部では見える可能性があるが、24日夜以降のことになるという。
太陽は過去数年間静かで、静かすぎたと言える。その一因は11年間の太陽活動周期の閑静期だったことがある。科学者らは昨年、1世紀に1度あるかどうかという異常に静かな期間に太陽が入りつつあるとの見方を始めた。NASAが2010年―太陽活動が静かな時期―に打ち上げた衛星を使って太陽を観測している科学者らは興奮している。宇宙飛行センターのプルキネン氏は「このようなことは何年間も経験したことがない。特別なことだ」と語っている。(AP)>
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