年末に、日頃敬愛している伊藤玲子先生が、私の仕事場をたずねて下さった。偶然その時に、親しい友人で、女優の村松英子さんが寄ってくれていたので、3人で来年こそは、日本を立ち直らせなければならないと、意見を交わした。
私はもう何十年になろうか、日本を憂うる同志と、この国に正気をふたたび宿らせるために戦ってきたが、日本の状況が年を追うごとに劣化していると、嘆いた。
「もう、20年も前のことになりますが、私はある夜、11時ごろに新宿にいました。どこを見ても、若い男女が頭を茶髪や金髪に染めて、遊び呆けていました。私はその時に、ふと先の大戦で生命を捧げた御英霊が日本に凱旋して、失われた青春を取り戻そうとして、若者の姿をかりて遊んでいるにちがいない、しかし、日本が危機に見舞われる時には、これらの若者たちもきっと日本を護るために、立ち上がってくれるだろうと、思いました。
私たちに与えられた仕事は、日本が万一、危機に直面する場合に、国民の国を愛する精神を高く燃えあがらせるために、火種をつねに絶やさないことです。火種は勢いがよいほど、役に立ちます。それが、私たち保守陣営の使命だと、思います」と、いった。
伊藤先生も、村松さんも、大いに賛成してくれた。2人の麗人が「“火種の会”をつくりましょうよ」と、身を乗り出した。
伊藤先生は85歳になられるのに、この国を守るために、沖縄から北海道まで奔走されている。私たちも伊藤先生に従って、日本を蘇生させるために、渾身の力を振りしぼらなければならない。私の新年の誓いである。
じきに梅の蕾が開く。誰が作者なのか忘れたが、「火種ない家を守るか梅の花」という句があった。日本が火種のない空き家になってはなるまい。
杜父魚文庫
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