8984 原発事故議事録「作成せず」は民主党の悪弊  古沢襄

読売新聞は一月二十七日付けの社説「原発事故議事録”作成せず”は民主党の悪弊だ」と厳しく批判した。15年間も野党だった民主党だから、不慣れな失策があっても仕方ないと”ハト・カン政権”を大目にみる民主党支持者もいるが、民主主義の根幹でもある政治の公開性を意図的にネグる政権の存在は許されない。
<意図的に記録を残さなかったと疑われても仕方あるまい。民主党政権の重大な失態である。東京電力福島第一原子力発電所事故で、政府の原子力災害対策本部(原災本部)の議事録が一切作成されていなかった。
原災本部は、原子力災害対策特別措置法に基づき昨年3月11日に設置された。首相を本部長に全閣僚が出席し、年末までに計23回開かれている。事故の拡大防止策や避難範囲の設定などの重要事項を検討し、決定してきた。
議事録がないことは、昨年5月に問題化した。当時の枝野官房長官は、危機対応に追われたためなどと説明し、改善を約束した。だが、その後も放置されていた。
政策決定の経緯が不明では、事後の検証ができず、政策の信頼性にも疑念が生じかねない。
事故対応を指揮した菅前首相は8月、退任の記者会見で「私の活動を歴史がどう評価するかは後世の人々の判断に委ねたい」と述べた。しかし、記録がなければ「判断」も難しいだろう。
野田首相は、当時のメモなどを基に改めて議事録を作成する方針を表明した。作成されなかった原因も徹底的に究明すべきだ。
深刻なのは、東日本大震災の緊急災害対策本部、電力需給の検討会合などでも議事録が作成されていない疑いがあることだ。
重要会議の議事録を作成しないのは、誤った「政治主導」と「官僚性悪説」に起因する民主党政権の体質の問題でもある。
政権交代後、民主党は事務次官会議を廃止する一方、関係閣僚会議や政務三役会議を創設した。
多くの会議で出席者を政治家に限定し、発言を記録する官僚さえ排除した。特に菅前首相は、官僚を敵視する傾向が強かった。
議事録がないため、政治家の議論が蓄積されない。堂々巡りで結論が出ず、だれも責任をとらない。これでは政策決定が迷走するのは当然だ。民主党は、この悪弊を抜本的に改める必要がある。
正式な議事録を作る人的、時間的余裕がないのなら、録音で発言の記録を残すだけでもよい。早急に改善策を講じるべきだ。
公文書管理法は、閣僚らが出席する会議などについて、記録文書の作成を義務づけている。
2007年に年金記録のずさんな管理が明らかとなったのを機に法制化された。当時の野党だった民主党は、政府の管理責任を追及する立場だった。猛省してもらいたい。(読売)
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