ニュート・ギングリッチが民主党の批判者として登場した時には共和党保守派の喝采を浴びた。とくにクリントン政権と激しく戦い、党内きっての議会通のベテラン議員として知名度があがった。だが未成年の未婚の母に対する福祉を打ち切って、その子供を孤児院に収容することで国の福祉予算を減らせるという提案をするなど、どうみても旧態依然たるコチコチの保守派のイメージが強く残る。
さらに糟糠の妻から現在の若い妻に乗り換えたことや、金銭スキャンダルが暴露されて人気を一気に下げた。それでも妥協を許さない頑な民主党の批判者として保守派の一部に強い支持がある。オバマ大統領の再選を阻む有力なカードとみなされた。
だがギングリッチのスタイルでオバマ再選を阻むとは思えない。むしろオバマ支持層から票を奪還する新しい共和党のイメージを打ち出し、”大きな政府”から民間活力を重視する”小さな政府”という政策イメージを強調する時期にあるのではないか。ギングリッチではその役割が果たせない。
ミット・ロムニーがその役割を果たせるか、まだ明確ではない。”小さな政府”の具体的な政策が、まだ見えないからである。ギングリッチとの中傷合戦で多くの時間を費やしている。だがギングリッチよりも幅があるとみられることから、オバマ再選を阻む共和党の大統領候補として一歩先んじたのが現状ではないか。
英ロイターは、ギングリッチが劣勢を跳ね返し、保守派の支持を得て再起するのかを占った。全米の組織力、資金力でギングリッチはロムニーに差をつけられている。しかしギングリッチは八月の共和党全国大会で逆転勝利すると言った。だが、その道は険しく可能性は薄い。
<[ワシントン 31日 ロイター] 31日に行われた米大統領選の共和党候補指名争い第4戦となるフロリダ州予備選では、ニュート・ギングリッチ元下院議長がミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事に敗北した。
一方、ギングリッチ氏は31日支持者の前で「今後6カ月、人々の力が資金力に勝つことを証明する」と述べ、共和党が正式に候補者を指名する8月の党全国大会まで戦いを続ける考えを示した。
ギングリッチ氏はまず、今後数週間を生き延びなければならない。2月4日のネバダ州党員集会をはじめ、コロラド州やミネソタ州の党員集会と続くが、これらの選挙戦で同氏は厳しい局面に立たされている。テレビ中継の討論会に全米がわく中、ギングリッチ氏がロムニー氏にステージ上で向き合うのは2月22日まで予定されていない。その間ギングリッチ氏の勢いは失われ、資金が枯渇する可能性もある。
戦いの場が東海岸から西海岸と全米各地に広がるなか、ギングリッチ氏の勘と経験に頼った選挙活動はロムニー氏が2008年から築いてきた組織力に対抗しなければならない。
共和党のコンサルタント、マット・マコイアック氏は「ギングリッチ氏の選挙活動は今後3週間、バターン死の行進に直面する。選挙資金を集めたり、流れを大きく変える可能性は低く、ロムニー氏の勢い止め圧力をかけることはほぼ不可能だろう」との見方を示した。
一方、ギングリッチ氏の戦略担当者は、同氏が依然、共和党大統領候補者になるために必要な1144人の代議員を獲得できると見込んでいる。特に、3月6日の予備選・党員集会が集中するスーパーチューズデーで保守派色の強い南部の州で巻き返せれば、その可能性は高いという。
ギングリッチ氏は、スーパーチューズデーで、出身地のジョージア州をはじめ、テネシー州やオクラホマ州で勝利する可能性がある。さらに、その1週間後に行われるアラバマ州とミシシッピ州の予備選で勝利すれば、指名獲得に向け大きな前進となる。
フロリダ州での勝利でロムニー氏の代議員獲得数は71。一方、ギングリッチ氏は23。大半の州では比例代表制がとられているため、6月に行われるカリフォルニア州予備選が候補者決定を左右することもある。
グッゲンハイム・ワシントン・リサーチ・グループのアナリスト、クリス・クルーガー氏によると、ある候補者が3月末前に大統領候補者になるため必要な代議員を確保することは数学的に不可能という。(ロイター)>
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