ロンドンの英ロイターが「変わる中東の勢力図」という中東の将来図についての分析記事を出している。第一次世界大戦後、イギリスとフランスは中東での宗主国の地位を手中にしたが、第二次世界大戦後は両国とも中東から撤退した。
そのイギリスの通信社がイラクなど中東から米国が撤退を迫られた現状をとらえ、その空白に中国とロシアが「米国後」を埋めようとしている状況を、かつての宗主国の経験を下敷きにして将来分析をした点が興味深い。
まずロシアはシリアに積極的に影響力を強めている。ロシアはアサド政権を支持し、今月に入って港湾都市タルトスに空母艦隊を配備して、欧米による介入をけん制する動きを見せているという。
中国はイラン問題について、米軍の目を東南アジアからそらすための「使える道具」として考えている節があるという。中国が資源の中東依存度が今後さらに高まると、望むと望まざるにかかわらず、中国はイランなど中東で政治的に深く関わらざるを得ないだろう、と分析した。
一方、米国はどうか。ブッシュ政権下で当時のウォルフォウィッツ国防副長官らが主導した新保守主義(しんほしゅしゅぎ、英:neoconservatism:ネオコンサバティズム、略称:ネオコン)によって、アフガンやイラクに介入する戦争を行ったが、結局、失敗に帰した。
だがネオコンを支えているのは共和党の親イスラエル(シオニズム)政策を支持するアメリカ国内在住のユダヤ(イスラエル)・ロビーが依然として存在する。イスラエルがイラン攻撃を狙っているのは、その延長線上にある。米国やイスラエルなどでは、中東の独裁国に対して中国とロシアが影響力を強め、同地域の一層の不安定化をもたらしかねないと主張している。
ロイターは米国と欧州諸国が大きな存在感を示していた時代が終焉を迎え、ロシアや中国など新興経済国の台頭が目覚ましいとしながら、資源や領土、影響力をめぐって各国が争っていた19―20世紀をほうふつさせる状況を生んでいると指摘した。
だから「中東は社会経済的混迷を深め、以前より秩序を保ちにくくなっている」というのが分析の結論の様だ。中露によって中東に新秩序が生まれるとはみていない。
<[ロンドン 31日 ロイター] 中東地域をめぐる「パワーポリティックス」の構図が変わりつつある。昨年末、米軍がイラクからの撤退を完了。米国と欧州諸国が大きな存在感を示していた時代が終焉(しゅうえん)を迎え、ロシアや中国など新興経済国の台頭が目覚ましい。
専門家らは現在の状況について、資源や領土、影響力をめぐって各国が争っていた19―20世紀をほうふつさせると指摘する。米海軍大学で中東学を教えるハヤット・アルビ氏は「中東はいつだって大国による勢力争いゲームの舞台となってきた。要するに、今後はプレーヤーの数が増えるということ。帝国主義時代の宗主国のように、新興国は中東で機会と利益を見いだすだろう」と語る。
<よみがえる帝国主義>
1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争、カダフィ政権を崩壊に追い込んだ昨年のリビア軍事介入では、ロシアと中国は積極的に関わることはしなかった。しかし、現在は中東でその影響力を強めつつある。
シリア情勢をめぐっては、両国とも体制に変化をもたらすような介入は避けるべきとの立場を明確にしている。特にロシアは今月に入り、シリアの港湾都市タルトスに空母艦隊を配備するなど、欧米による介入をけん制する動きを見せている。ロシアによるアサド政権支持は、リビア型の介入を防ごうとするだけでなく、冷戦時代に築いた同国での地盤を守ろうとする動きにもとれる。大統領選を控えるロシアのプーチン首相は、外交で成果を挙げ、西側に屈しない姿をアピールしたいようにも見える。
一方、イランの核開発問題では、欧米が主導する制裁で成否の鍵を握るのは中国だといえる。中国はイラン問題について、米軍の目を東南アジアからそらすための「使える道具」として考えている節がある。また、資源の中東依存度が今後さらに高まることを考えれば、望むと望まざるにかかわらず、中国は中東で政治的に深く関わらざるを得ないだろう。
もし米国がエネルギー自給力を高めることに成功し、中東から身を引くことができれば、中国が米国に取って代わる重要な国になる可能性もある。
米国やイスラエルなどでは、中東の独裁国に対して中国とロシアが影響力を強め、同地域の一層の不安定化をもたらしかねないと懸念する声も聞かれる。
<台頭する中東諸国>
しかし、帝国主義時代とは明らかに違う点もある。中東以外のプレーヤーたちは、米国が去った後の間隙(かんげき)をつこうとするトルコやサウジアラビア、イランなどの勢力を相手にしなくてはならない。民主化運動「アラブの春」によって、中東は安定しているという通説が覆されたことも事を複雑にしている。
テルアビブ大学のアッシャー・ササー教授は「中東は社会経済的混迷を深め、以前より秩序を保ちにくくなっている。中東の動向がそれ以外の国々の注目を集めることはあっても、その逆はない」と指摘した。
<米国支配に嫌気も>
アラブの春はある意味、中東の独裁政権を支援してきた米国の政策を市民が拒否したともいえるが、中東ではこれが受けのいい捉え方だとする意見が米国内でも聞かれる。米海軍大学のアルビ氏は「中東は同じ超大国に影響を与えられ続けることにうんざりしている。だから、中国を歓迎するかもしれない」と語った。
一方、中東で依然として最強の軍事力を有し、同地域の安全保障に深く関わる米国を除外するのは時期尚早だとする見方もある。ワシントン近東政策研究所のロバート・サトロフ氏は「中東での米国の衰退は誇張されている」とし、「中東の人々がビザ取得のために中国大使館に列をなしたり、子どもたちを中国の大学へ進学させたり、中国の防衛システムなどを選択するようになったりした時に初めて、米国の衰退については真剣に語ることができる」と語っている。(ロイター)>
杜父魚文庫
9023 変わる中東の勢力図、「米国後」を狙う中露の思惑 古沢襄
未分類
コメント