9028 日韓関係を正そう 加瀬英明

昨年12月に、韓国の李明博大統領が来日して、日韓首脳会談が行われた。
李大統領は会談直前に、政府の事実上の認可のもとに、ソウルの日本大使館の前に、慰安婦像が設置されたことを取り上げて、「日本が旧慰安婦に対して補償しなければ、韓国内に第2、第3の慰安婦記念碑が建つこととなろう」といって、野田首相を恫喝した。
 
野田首相は日本大使館前の慰安婦像を、直ちに撤去することを要求したうえで、「それがお出来になれなければ、国内に1千、2千、1万の慰安婦像をお建てになればよい。そうすれば、韓国が売春婦の国として世界に有名になることでしよう」といって、李大統領をたしなめるべきだった。
1965年の日韓基本条約
韓国は1965年に日韓基本条約が結ばれた時に、日本が韓国に多額の経済協力金を提供することと引き換えに、日本に対する請求権をいっさい放棄することを、約束している。また、慰安婦像を日本大使館の前に設置した行為は、外国公館の尊厳を守ることを義務づけたウイーン条約にも、違反している。
これでは、韓国は野蛮国だといわれても、仕方あるまい。隣国の名誉のために、惜まれる。
国際法は国内法に優先する
韓国の最高裁が、政府に日本から旧慰安婦に対して補償を要求することを、義務づけているというが、非常識はなはだしい。国際条約は、国内法に優先する。大統領は国家元首として、条約が神聖なものであるといって、最高裁を叱責しないのか。
私は日韓基本条約によって、国交が樹立された前年にはじめて訪韓してから、韓国政府や、研究所の招きによって、韓国を頻繁に訪れた。多くの親しい友人ができた。
1980年代に訪れた時に、韓国ですでに慰安婦問題が取沙汰されていた。私が朴正熙政権の元高官に、「もし韓国政府が慰安婦を日本から不当に虐待された被害者だと認定したとすれば、韓国政府がどうして補償しないのでしようか」と、たずねた。この高官には、日本時代に軍歴があった。
韓国では前大戦中に日本軍に従って戦場に赴いた慰安婦を、「従軍(チョングン)慰安婦(ウイアンプ)」とか、「軍隊(グンデ)慰安婦(ウイアンプ)」「強制(カンゼ)慰安婦(ウイアンプ)」と呼んでいる。
すると、「いや慰安婦は、全員戦地に稼ぎにいった醜業婦でしたから、その必要はありません」という答が、戻ってきた。
私は韓国が経済的に発展するうちに、いつのまにか未熟な国となってしまったと思う。そのあいだに、日本は1980年代に入ってから、しだいに気骨を失なった。
韓国は竹島(韓国側の呼稱では独島(ドクト))問題をとっても、軍隊を置いて実効支配しているのに、恒久施設を建設したり、島で国会の委員会を行ったり、ファッション・ショーや、音楽会を開催することによって、そのたびに日本を辱しめて、快哉を叫んでいる。韓国海軍最大の上陸強襲艦を、『独島』と命名している。
12月19日に、朝鮮民主主義人民共和国――北朝鮮の最高権力者である、金正日中央軍事委員長が死んだ。28日に、葬儀が営まれた。遺体が一面の白雪のなかを、保存状況がきわめて良好な1970年代製のアメリカ製のリンカーン・コンチネンタルの屋根に乗せられて、右側に20代で3代目の後継者となった、金正恩人民軍大将が徒歩で付き添って、ピョンヤンの中心街を進んだ。
遺体を運ぶ先頭の車のあとに、屋根のうえに「太陽のごとき偉大な領袖」「民族の不世出の英雄」「絶世の軍事戦略家」と呼ばれた、先代の肖像写真を固定した、もう1台のリンカーン・コンチネンタルが続き、3台目もやはりリンカーン・コンチネンタルだったが、巨大な花環を乗せていた。あのリンカーンのリムジンは、1994年の金日成主席の葬列に当たっても用いられた。アメリカの高級車が、北朝鮮の体制の権威を支えるために使われていたのは、何とも場違いだった。
テレビの映像では、沿道に並んだ市民が全員、天も地も裂けよと、号泣していた。
民族の文化
私は韓国で葬儀に招かれた時に体験したが、遺族がまったく同じように号泣しているのに、異郷に来たのだと実感したことがあった。これは文化の形であるが、韓国語で「クゲ・ウルブチタ」(声を張りあげて、声のかぎりに泣く)という。
私は韓国で、愛人がいる男の妻が死んだところ、葬儀のあいだ人前で号泣するが、厠に入ると喜んで、声を押し殺して笑うという小咄を、聞いたことがあった。この小咄は韓国人なら、誰でも知っているということだった。あの日、ピョンヤンの便所は笑顔によって満ちたものだろうか。
韓国人はしばしば感情を、爆発させる。TPPに反対する国会議員や、農民が「決死(キョルサ)反対(バンデ)!」と、絶叫する。1月末に北朝鮮の映像を見ていたら、金正恩を迎えた群衆が「金(キム)正恩(ジョンウン・)決死(キョルサ)擁護(オンホ)!」と、繰り返し叫んでいた。
酒席では、いまでも男たちが「死ぬまで(マシゴ・)飲も(チュプ)う(チャ)!」とか、「マシゴ・ハムケ・チュプチャ!」(一緒に死ぬまで飲もう!)といって、威勢よく杯を挙げる。
私が韓国を頻繁に訪れたころには、ビールをなみなみと注いだコップに、ウイスキーをみたしたワンショット・グラスを沈めて飲むのを、「爆弾(ボクダン)酒(チュ)」といって流行っていた。
いまでは、「爆弾酒」のコップのうえをラップで覆ったうえで、カクテルのシェーカーのように振ってから穴をあけると、ビールで割ったウイスキーが勢いよく噴きでるのを、「射精(サジョン)酒(チュ)」と呼んで流行っているという。
昨年、韓国の大企業の役員が来日して、赤坂のクラブに案内された時に、「射精酒」を実演してくれた。「韓国人はこれを何杯もやって、頭からビショ濡れになるまで飲んで、楽しむのです」と、クラブのマダムが教えてくれた。 
ふだんはおとなしいのに、いったんハンドルを握って、運転すると荒々しくなって、交通法規を守らない者が多い。「過激運転(ファギョカン・ウンジョン)」というが、最近まで「ファギョカン・ウンジョンをやめよう」という公共CMが、テレビで流されていた。
なぜ日本に対してだけ居丈高なのか
韓国はアメリカをはじめとする外国に対しては、節度を弁えて接するのに、日本となると居丈高になって、感情を爆発させる。韓国人は日常、つねに相手を出身校や、親の社会的な地位によって、自分との上下を判断する。住みにくい社会である。情緒不安定な人々だ。
しかし、韓国がことあるごとに、日本を嬲(なぶ)りものにするのは、韓国のせいではない。日本が卑屈な態度を、とってきたためだ。おうおうにして、苛めっ子は弱虫の子がいるから、苛めを募らせるものだ。
日本は韓国に対して卑屈に振る舞うことによって、日韓の2国間関係を歪めているだけでなく、中国や、ロシアからも侮りを招いて、嬲られる。
私は昨年12月に、6ヶ月ぶりにワシントンに戻った。量販店を覗くと、韓国製のサムソンや、LGの家電製品が、日本製品を圧倒していた。
往復する機内で、フランスでベストセラーになっている小説を読んだ。主人公のフランス人カメラマンが韓国の「Samsung ZRT-AV2カメラが、ニコンや、キャノンよりも上をいっている」と述べていたので、嬉しくなった。
相互理解、相互敬意を
韓国の経済発展は、日本統治の賜物である。台湾についても、同じことだ。台湾と海南島は面積がほぼ同じだが、もし日清戦争後に日本が台湾ではなく海南島を割譲されていたとしたら、海南島が今日の台湾のように発展し、台湾は今日の海南島と変わらない経済水準にあったはずだ。
もし韓国が中国の属国であり続けたか、ロシアの統治下に置かれたとすれば、今日の韓国は中国の東北部か、旧ソ連の中央アジアの共和国の水準にあっただろう。
私は今日の韓国が日本を淩駕する勢いをみせているのは、私たちの勲章だと思って喜んでいる。
杜父魚文庫

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