私は『「中国の正体」を暴く』(小学館101新書)という書を世に出しました。自著の単なる宣伝とも思われるリスクをあえて覚悟の上で、この書で提起する重大課題について、さらに紹介したいと思います。
日本ビジネスプレスの私の連載コラム「国際激流と日本」からの転載です。なお原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34473
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中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦
中国の軍事の秘密の動向は米国でしか実態をつかめない部分が大きい。なにしろ唯一のスーパーパワーたる米国の情報収集力は全世界でも抜群なのであ る。日本が足元にも及ばないほどの諜報の能力をも有している。人工衛星や偵察機による偵察、ハイテク手段による軍事通信の傍受、あるいはサイバー手段によ る軍事情報の取得などの能力は米国ならでは、である。
私は『「中国の正体」を暴く』で、米国の中国軍事研究の専門家たち少なくとも12人に詳細なインタビューをして、彼らの見解をまとめて発表した。
その結果、浮かび上がった全体像としては、第1に、中国の大軍拡が疾走していく方向には、どう見ても米国が標的として位置づけられているという特徴が明白なのだ。
第2には、中国の軍拡は日本や台湾に重大な影響を及ぼし、その背後に存在する米国のアジア政策とぶつかるだけでなく、米国主導の現行の国際秩序へのチャレンジとなってきたという特徴がさらに屹立する。
つまり、中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦なのである。米国の専門家たちの大多数は少なくともそう見ているのだ。
こうした特徴は私が本書で最初に紹介した米国防総省相対評価(ネットアセスメント)局の現職顧問、マイケル・ピルズベリー氏の次のような言葉にまず総括されていた。
「中国がなぜ軍事力を増強するのか。いくつかの事実を見ると答えが自然に浮かび上がります」
「まず現在、中国人民解放軍が開発を急ぐ対艦弾道ミサイル(ASBM)は明らかに米軍の原子力空母を標的にしています。この特定のミサイルが長距離で狙う艦艇というのは、米国しか保有していないのです」
「中国は2007年1月に人工衛星を破壊するミサイルを発射し、見事に標的の破壊に成功しました。この種の標的も米軍以外にはありません。米軍が実際の軍事作戦で人工衛星の通信や偵察の機能に全面依存することを熟知しての動きでした」
中国の軍拡の目標は台湾制圧の先にある
中国の軍拡の最終目標については、従来、米国の専門家たちの間で意見が2つに分かれていた。
第1はその究極目標が台湾有事にあるとする意見だった。中国は台湾を自国領土と完全に見なしており、その独立宣言などに対しては軍事力を使ってで も、阻止や抑止をすることを宣言している。中国はそうした有事のために台湾を侵攻し、占領できる軍事能力を保持しているという見方である。台湾有事以上に は軍事的な野望はないという示唆がその背後にはあった。(つづく)
杜父魚文庫
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