9064 野田首相が男系継承の尊重に言及したわけですが 阿比留瑠比

今朝の産経は1面で、「男系堅持 首相が意向 女性宮家創設めぐり答弁」という記事を載せています。9日の衆院予算委員会で自民党の稲田朋美氏の質問に答えたものですが、どういうわけか各紙はこの重要な答弁についてほとんど書いていません。私の気づいた範囲では、日経が2面にわずか8行のミニ記事で「女系・女性天皇に慎重 首相」と掲載していただけでした。
まあ、各紙の予算委担当記者の問題意識が低くて聞き逃したのか、ことの大事さに気づかなかったのかは分かりませんが、これは極めて重要な答弁だと思いました。以下はその質問と答弁ですが、野田氏は稲田氏の指摘にほぼ全面的に賛同しており、これは今後の方向性を決める上で重大な意味を持ちますね。
稲田氏:不断の改革は必要だが、変えるべきものと変えてはいけないものがあると思う。わが国の象徴である天皇陛下、皇位の承継の原則は変えてはいけないものの代表だと思う。2000年以上に及ぶ男系維持の原則、今の天皇陛下からお父さんをさかのぼって神武天皇まで続く伝統は圧倒的に美しい世界に例を見ない伝統だ。変えるべきではないと思う。皇室典範第一条の皇統、憲法2条の世襲は日本の有志以来、1つの例外もなく守られてきた伝統である男系維持を前提としていると解釈すべきだが、総理の見解は
野田首相:ご認識は私もその通りだと思う。憲法2条、皇室典範の1条で男系というふうに明記している。古来、ずっと長くそういう形で続いてきたことの歴史的な重みをしっかり受け止めながら、一方で、皇室活動の安定性をどうするかという観点で、皇位継承の問題ではなくて、今、女性宮家の問題は有識者を含めて議論させてもらうが、意識は私は同じだ。
……政府は、今月下旬から女性宮家創設に向けた有識者ヒアリングを始めます。羽毛田信吾宮内庁長官や園部逸夫内閣官房参与をはじめ、事務方にはこれを将来の女系天皇容認につなげたい意図がちらつくわけですが、野田首相自身がとりあえずその意図のないことを明言したのですから、そうそうそっちの方向に持っていくことはできないでしょう。
5日付の読売新聞の遠藤弦政治部次長のコラムは、野田首相の心境についてさらっとこう断言調で書いていました。
「首相はすでに党分裂も辞さぬ覚悟を固めている」
これは、遠藤次長が野田首相本人からそう聞いているのか、あるいは周辺から伝え聞いているのか分かりませんが、実際、最近はこの手の話をよく耳にします。あるいは、アドバルーン的に覚悟を打ち上げてみせることで、首相サイドが反対勢力を封じようとしているだけかもしれませんが、言葉は必ず独り歩きするものだし、嘘から出た誠の例も枚挙にいとまがありませんね。
もし、野田首相が本心からそう思っているのだとしたら、あるいは今後、これまでとは違った形で「自分の色」を出してくるかもしれないな、とふと思った次第です。仮に党分裂後の政界再編まで頭のどこかにあるのなら、新しく同志を糾合するためにカラーを鮮明にする必要もありますから。まあ、実はそんなことはなくて、結局は泥に頭を突っ込んだドジョウのままで終わるのかもしれませんが。
皇室をめぐる野田首相の発言をきっかけに、こんなことを連想(妄想)しました。実際のところ、将来のことなど何も分からないし、予想などできるはずもないのですが……。
杜父魚文庫

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