胡錦濤国家主席から習近平副主席に世代交代する中国共産党の新体制移行が注目されているが、習近平氏が13日から17日にかけて米国を公式訪問。
習近平氏は今後1年1カ月は副主席にとどまる。今秋に中国共産党トップの座を胡錦濤国家主席から受け継いだ後、2013年3月に国家主席に任命される見通しとなっている。米国の公式訪問は習近平氏の器を見定める格好の場となることから、世界の注目を浴びている。
英ロイターは習近平訪米の意味についてワシントンから長文の解説記事を公表している。
<[ワシントン 10日 ロイター] 中国の次期国家主席就任が有力視される習近平国家副主席が、13─17日にかけて米国を公式訪問する。権力の中枢ワシントンから、アイオワの大豆畑、太陽が照り輝く南カリフォルニアまで、米国の多様な側面を感じ取ることになるだろう。
ただ、中国を2023年まで指導し対米政策を握る者として、米国からだけでなく、彼にとってさらに重要となるであろう中国の指導部からも、その器かどうか評価されることになりそうだ。
米ヘリテージ財団アジア研究所のウォルター・ローマン所長は「これは習副主席が米国を手なずけるだけの素質があるのかどうか、リーダーシップを北京に示すためのまさにPR訪問だ」と述べた。
習副主席は今後1年1カ月は副主席にとどまる。今秋に中国共産党トップの座を胡錦濤国家主席から受け継いだ後、2013年3月に国家主席に任命される見通しだ。
今回の訪米でホスト役を務めるのは、昨年8月に中国を訪問し、習副主席と9時間の話し合いを持ったジョー・バイデン米副大統領。
副主席はホワイトハウスでオバマ米大統領と会談するほか、クリントン米国務長官との昼食会、パネッタ米国防長官との会談が予定されている。
習副主席の訪米を前に、米政府当局者やアナリストは、米中両国の貿易摩擦、イランやシリアをめぐる外交問題に関する両国間の「成果」よりも、オバマ大統領の任期以上に長く権力の座につくことが見込まれる副主席との間で結ぶ「投資」について関心を寄せている。
米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のダニー・ラッセル氏は、米政府が「公式な対応と非公式の対応をうまく使い分けるだけでなく、外交儀礼上の成果と実質的な成果のバランスをうまくとるようにするだろう」と指摘。「習副主席と中国政府が実質的な成果を得られるよう誠実に対応する」と述べ、円滑な協議のために人権問題などへの言及を避けることはない、と付け加えた。
オバマ大統領との会談はバレンタインデー14日夜に予定されているが、米政府当局者によると、習副主席は訪米に歌手である彭麗媛夫人は伴わないという。15日には、たびたび中国批判の温床となっている米議会を訪れ、ベテラン上院議員やジョン・ベイナー下院議長とも会談する。
一方、14日にはホワイトハウス近くの公園で、チベットや台湾などをめぐる中国政府の政策に反対する数百人規模の抗議活動も予定されている。主催者が明らかにした。
<かつて短期滞在したアイオワ州へ>
ワシントン訪問の後、習副主席は1985年に短期間滞在したアイオワ州マスカティンの一家を訪問する予定だ。同州は、副主席が当時勤務していた河北省と姉妹州・省関係にある。
副主席が前回訪問した際にも知事を務めていたアイオワ州のテリー・ブランスタッド知事はロイターに対し、副主席を「旧友」と思っており、副主席の訪米は再会の機会でもあり、大豆ととうもろこし輸出が盛んな州にとってビジネスチャンスになると述べた。
同州の対中輸出は、2000年から2010年にかけて12倍増え、6億2700万ドルに達した。
前出のローマン所長は「アイオワ州を訪問先に選んだのは、いかに自分が米国を理解しているか(北京に)示すためだ。なぜなら副主席は同州に行ったことがあり、『わたしはここの人々を知っている。やり方も分かっている』というわけだ」と述べた。
<LAで経済貿易フォーラムに出席>
最後の訪問先はロサンゼルス。ロサンゼルス港を訪れ、環太平洋貿易における港の重要な役割をアピールする狙いがある。
市当局者によると、習副主席はバイデン副大統領に伴われ、米中経済貿易フォーラムに出席する。同フォーラムには数百人の米ビジネス界幹部が参加。ビヤライゴーサ市長とカリフォルニア州のブラウン知事は、全米50州すべての知事を招待しているという。
習副主席は訪米の全行程を通じて、胡主席が副主席時代の2002年に行った前例をほぼ踏襲することになりそうだ。
ブッシュ(ジュニア)政権でアジア問題のトップアドバイザーを務め、現在は米シンクタンクの戦略国際問題研究所に在籍するマイケル・グリーン氏は「習副主席は胡主席がこなしてきた評価項目をクリアしなくてはならない。それが(中国の)やり方だ」と指摘。「前任者が乗り越えてきたことをこなす必要がある。もしかしたらそれ以上が必要になるかもしれない」と述べた。(ロイター)>
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