鳩山由紀夫元首相は昨夜、東京・渋谷で講演し、菅直人前首相についてあれこれ批判していました。どちらも五十歩百歩、というより目くそ鼻くその類だと思いますが、わが国の最高指導者経験者が何を思い、過去についてどう証言しているかを記録に残すことは意味があると考えるので、ここに掲載しておきます。
まあ、ルーピーのペテン師に関する発言など読むだけで目が汚れ、頭がどうにかなるという方は避けてください。
【マニフェストはだれがボロボロに】
私が(一昨年6月に)辞めたので、本当はこのマニフェストも頭(表紙)を菅さんに変えて、このままやってもらいたいと思ったが、菅さんは少なくとも鳩山の方向は踏襲せずということで全部切られてしまって、寂しい思いをしたが、ここでグチをいってもしょうがない。
天下り根絶、(ガソリン)暫定税率廃止……。マニフェストを国民に訴えて支持を得た以上、どこまでできてできなかったかを国民にきちんと知らせる必要がある。実施したのは2割、一部実施が3割、着手済みが3割。できていないのが1割5分ぐらい。1年目はこれ。2、3年目でかなりいったと次の選挙で示して、理解と言うよりもどうなっているかを正直に告白することが必要だ。
そうでないと、新聞にはマニフェストはぼろぼろだと書かれ、演説で、だれがボロボロにしたかいわなければいけない恥ずかしい状況だが、正直に言わない限り、次の選挙で言っても、どうせ何もできなかったではないかといわれたら、マニフェストどころではない。マニフェストの現状に必ずしも満足していない。
【選挙に負けて責任とらない】
私が辞任して菅君(ママ)が、菅直人さんが総理になり、当時(支持率が)V字回復といわれたが、私が辞めて回復というのは必ずしもうれしい話ではないが、V字回復を民主、内閣はして、これならばいけるという矢先に消費税、大変国民の関心のある議論を出して、結果として参院選に惨敗し、結果として参院の過半数を失う状況になり、民主党の訴える政策がなかなか通らない状況になってしまったのは返す返すも残念だ。
何のために辞めて……参院選に勝つつもりでいたわけだが、そうならなかったのは大変つらいことだ。大事なことは、こういう状況を作ってしまい、本来政治家はきちんと選挙に負けたら責任をとると言うことをこれからも続けていく必要がある。大事なことは政策の意思決定をして、官僚が関与しても責任は政治家がとる癖を付けなければ、官僚は政治家を信用しなくなる。どんなことでもトップ、政務三役が責任をきちんととることができる政治家を心がけていかなければならない。
【私の後は官僚任せ】
その後の政治が国民に必ずしも理解を得ていないのはご案内の通りだ。原因は私自身が作っただけに申しわけないが、私の後を継いだ方々が、鳩山が官僚任せから政治主導に変えようとしてうまくいかなかったから官僚任せに動かそうとしているとすると、大変まずい。米国にモノを申そうとした、東アジア共同体構想を打ち出し、米国との安保はこれからも大事だが、日本はさまざまな過去を持ち、アジアの人を傷つけたこともある。そう言うアジアと心の信頼を築き中国や韓国などと心の信頼関係を結ぶことができて初めてアジアの中で日本の信頼が得られるのではないか。今でもそう思う。
東アジア共同体の発想、普天間移設の議論で、鳩山は米国に対して何かものを言おうとしてうまくいかなかったから辞任したと。ならば官僚任せに戻そう、米のいうことは聞いていこうという方向に少しずつ舵がきられているのではないか。例えば事務次官会議の状況など。総理の口から東アジア共同体が発せられなくなり、TPPに大きくかじがきられようとしているのは大きな表れではないか。私の轍を踏むなと言うことで、政権を維持したいのは分かるが、政策が良い方向に進めばいいが、いつか来た道にまたぞろ戻ってきているのではないか。そこは非常に心配だ。
【普天間問題を消費税増税で打ち消そうとした】
その一つの現象が消費税の議論ではないか。実は消費税の議論も、菅さんが副総理だったとき、しばしば2人で議論した。菅さんは
「鳩山さん、いいことがある。何か一つのことでつまづいたときには、厳しい苦境に陥ったときには、もっと大きなテーマを掲げることで前の苦しみから解放されるよ。だから普天間移設問題であなたはいま苦しんでいるが、普天間の苦しみを解放させるためには消費税と言ったほうがいいよ」
と盛んに副総理の時に私に言っていた。私は「それは自分の信念としてできない」と。消費税を上げるのはまだ先の話だ。消費税は将来は必要だと思っているが。
いまここで消費税といえば普天間が吹っ飛ぶよという議論は、あまりにも危ない話で、それをやったらおしまいだろうと思って私はやらなかったが、総理になった途端に菅総理が消費税と発言した。確かに消費税と発言したおかげで、しばらく普天間の話はほとんど新聞紙上から消えたが、それ以上に消費税の問題が大きくクローズアップされ、結果として民主党は選挙に負けたと私は理解している。
やりそうだなと思ったら、本当に言われたので……。(菅さんに)「言うなよ」と言いたかったのだが、総理を辞めた人間があまり大きなことをいうべきではないと思って黙っていたが、予想通りの話になってしまった。
……菅氏の就任直後の唐突な消費税10%上げ発言は、国民の目を普天間問題からそろそうとする目くらましだった、という話ですね。まあ、全部が全部そうだというわけではないでしょうが、いかにも菅氏らしい薄っぺらなエピソードであり、そんなところかもしれないなという気がします。
先日、北海道に行った際に地元の地方議員の方々と話す機会があったのですが、この鳩山氏の選挙区(北海道9区)はまだ、自民党の候補者が決まっていないそうですね。実にもったいないことです。次期衆院選は、地元有権者が正しい民意と良識を全国民に見せつける絶好の機会だと思うのですが、それが生かせないとなれば非常に残念です。
文藝春秋3月号に載っていた選挙予測によると、東京18区で菅氏は苦戦しているようです。これもまだとうなるか分からないでしょうが、仮に前首相と前々首相がともに落選するようなことになれば、非常に象徴的ですね。ここ2、3年の日本の悲劇を二度と繰り返したくはないと「ノーモア・ハトヤマ」「ノーモア・カン」の声は巷にあふれていますが、選挙での投票行動を通じてそれが実際に示されれば素晴らしいことだと思います。
いずれにしろ、次期衆院選後はどの政党も単独過半数はとれずに新党が乱立する可能性が高いと思います。その中で、石原慎太郎都知事がつくるかもしれない新党に、あの山崎拓元自民党副総裁が色目を使っているという情報があります。自民党からはもう公認されないけれど、まだ枯れていないということでしょうが、もういい加減にしてほしいですね、まったく。
杜父魚文庫
9100 鳩山元首相が菅前首相を批判した件について 阿比留瑠比

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