ギリシアがデフォルトに陥ると困るのはギリシアではなく欧州の銀行だった。事実上77%の債権放棄、ギリシア国民は収入半減、脱税と闇経済が広がる。
2012年2月21日まで徹夜の延長戦がユーロ財務相会議で続いた。いったん合意がなったと思いきや、それから13時間も徹夜で会議を続行し、ついに1300億ユーロの救済を決める。IMFのラガルド専務理事も出席しEU議会からも代表が列席し、だから会議はまとまらない。
前日までの合意は対ギリシア向け債権50%カットだった。これが53・5%に引き上げられた。つまり銀行団は現有債権の53・5%を放棄する。残りのローンも金利を3%から1・5%にまで落とし、ギリシア経済再建の手伝いをする。銀行団はギリシアへの貸し付けから利益を完全に放棄したかたちとなる。
ギリシア側からみれば、パパンドロウ前政権のときに飲んだ条件でさえ過酷きわまりなく、公務員定数削減、給与削減がつづき、町では税金を納めない売り買いが拡大していた。
領収書が要らない買い物は、納税分を値引きする。かくてギリシア経済は四分の一がアングラに突入し、今回の合意ではさらに22%の公務員給与カット。往年の半分の所得になる。
対GDP比率にしても、欧州の基準であり、これを現在の160%から120・5%にするとギリシアは約束させられた上、厳密な監視団を受け入れるという、主権国家にとって屈辱の条件を呑まされた。矜恃の高いギリシア国民からすれば、ユーロのくそったれ、という心情だろう。
ギリシア国民からすると、こうなればユーロから抜け出した方が理にかない、元の自国通貨ドラクマが極端に安くなれば、韓国が演じた奇跡のように輸出競争力は一晩で回復し、いずれ経済は軌道に乗る。デフォルト? 戦後、五回もデフォルトをやってのけたギリシアはデフォルトに慣れっこである。
▼デフォルトでこまるのはギリシアなのか?
だから困るのはギリシアではなくて欧州の銀行団ではないのか、ギリシアを二階に上げて、ギリシア不在のままギリシア救済を協議するのはナンセンスだ、というのがギリシア国民の偽らざる心情。とくにドイツは余計なお世話、ということになる。
欧州の銀行から見れば、昨年すでに50%の債権放棄で合意し、経営はふらふら、今度は53・5%、合計すると77%の債権放棄となる。
つまり前回まで100万円を貸し込んでいた銀行が元金50万円となっていて、これを今回53・5%カットとなると23万2500円となる。もとの貸し出し額から言えば、じつに76・75%が消えるのだ。
杜父魚文庫
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