9161 大富豪5人が変えた米大統領戦、長引く共和党指名争いの裏事情 古沢襄

米大統領選共和党公認候補争いが混沌としている内幕をワシントンから仏AFPが暴露している。各候補の選挙資金の4分の1を、わずか5人の大富豪が支えていると、実名をあげて指摘した。
大富豪が資金を注ぎ込む先は「特別政治活動委員会(スーパーPAC)」と呼ばれる組織で献金額に制限がないという。言葉を変えれば、このスーパーPACが、共和党候補同士の中傷合戦の資金源となり、再選を狙う民主党バラク・オバマ(Barack Obama)大統領と対決する党公認候補選びを長引かせていると、専門家は指摘する。
「候補者争いは出だしにつまずけば、普通は資金が尽きて続けることができない。しかし、そうした候補の寿命を(スーパーPACが)長引かせている。何人かの富豪がいなければ、サントラム氏もギングリッチ氏も既に撤退している」(ノーマン・オーンスタイン氏)
「共和党の候補者選びは本来、今頃にはもう終わっているはずだ。だが、裕福な資金ドナーたちが基本的に広報合戦の資金を提供している。それがギングリッチ氏にサウスカロライナ州で勝利をもたらし、サントラム氏をいまだ参戦させている」(アンソニー・コラド氏)
これでは草の根の資金集めをしたオバマ大統領に、大富豪依存の共和党では勝てる筈がない。11月6日の大統領選本番で民主党のオバマ大統領を負かすことだと大富豪たちは言っているそうだが・・・。
<【2月23日 AFP】2012年米大統領選に向けて過熱する共和党候補指名争いで、各候補の選挙資金の4分の1を、わずか5人の大富豪が支えている。
彼らが資金を注ぎ込む先は「特別政治活動委員会(スーパーPAC)」と呼ばれる組織。特定候補の公認支援団体ではないが、それよりも大きな特徴として実質、献金額に制限がない。このスーパーPACが、共和党候補同士の中傷合戦の資金源となり、再選を狙う民主党バラク・オバマ(Barack Obama)大統領と対決する党公認候補選びを長引かせていると、専門家は指摘する。
■自らの「目的」のため巨額献金する富豪たち
さまざまなスーパーPACに集まった資金はこれまでに約1億2600万ドル(約101億円)だが、その4分の1を拠出しているのは5人の大富豪だ。
テキサス(Texas)州の実業家ハロルド・シモンズ(Harold Simmons)氏、ラスベガス(Las Vegas)のカジノ王シェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)氏、ワイオミング(Wyoming)州の投資家フォスター・フリース(Foster Friess)氏、米オンライン決済サービス「ペイパル(PayPal)」の共同創業者ピーター・ティール(Peter Thiel)氏、ヒューストン(Houston)の建設王ボブ・ペリー(Bob Perry)氏。――ただし、献金の方法や目的はそれぞれ異なる。
現在、献金額トップは1420万ドル(約11億4000万円)のシモンズ氏で、1000万ドル(約8億500万円)を拠出したアデルソン氏が続く。しかし、2人の献金の仕方は対照的だ。
シモンズ氏の最大の目標は、とにかく11月6日の大統領選本番で民主党のオバマ大統領を負かすこと。そのため、「オバマ氏の政策から米経済を救う」ことを掲げるスーパーPAC「アメリカン・クロスローズ(American Crossroads)」に1200万ドル(約9億6600万円)の大口献金をしたほか、ミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ(Massachusetts)州知事とニュート・ギングリッチ(Newt Gingrich)元下院議長を支持するスーパーPACや、既に撤退したリック・ぺリー(Rick Perry)テキサス(Texas)州知事まで、比較的まんべんなく資金を投入している。
対してアデルソン氏は、夫人や娘と家族ぐるみで献金をギングリッチ氏に集中させ、ギングリッチ氏を支持するスーパーPACに500万ドル(約4億円)の献金を2回している。「非常に裕福な人びとが選挙に影響力を奮うのには反対だが、それが実行可能な限り、私はやる」と米誌フォーブス(Forbes)に語っているアデルソン氏の推計純資産額は250億ドル(約2兆円)相当。ギングリッチ氏や他の共和党候補に最高1億ドル(約80億円)まで献金するだろうと公言している。
一方、現時点で指名争いをリードするロムニー氏の有力対抗馬と見られているリック・サントラム(Rick Santorum)元上院議員は、一時期最下位に落ち込んだ後、今月になってキリスト教保守派が強いミネソタ(Minnesota)、ミズーリ(Missouri)、コロラド(Colorado)の3州で全勝し、形勢を逆転させた。その復活を支えたのが、投資家フリース氏の献金をはじめとするサントラム氏支持のスーパーPACだと注目されている。
■スーパーPACが変えた選挙戦、中傷合戦も
米シンクタンク「アメリカンエンタープライズ研究所(American Enterprise Institute、AEI)」のノーマン・オーンスタイン(Norman Ornstein)氏は、次のように指摘する。「候補者争いは出だしにつまずけば、普通は資金が尽きて続けることができない。しかし、そうした候補の寿命を(スーパーPACが)長引かせている。何人かの富豪がいなければ、サントラム氏もギングリッチ氏も既に撤退している」
米コルビー大(Colby Colleg)教授で選挙資金研究が専門のアンソニー・コラド(Anthony Corrado)氏も、スーパーPACが指名候補選びの過程を長引かせている点に同意する。「共和党の候補者選びは本来、今頃にはもう終わっているはずだ。だが、裕福な資金ドナーたちが基本的に広報合戦の資金を提供している。それがギングリッチ氏にサウスカロライナ(South Carolina)州で勝利をもたらし、サントラム氏をいまだ参戦させている」
さらに、スーパーPACには2次的な影響ももたらした。候補者選びでの極端な対決姿勢だ。「そうしたグループ(スーパーPAC)による選挙広告の72%は、他の候補者を中傷するものだ。ネガティブなトーンの大きな責任は彼らにある」と、コラド氏は指摘している。(AFP)
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