9170 中国各地にみる人口移動の激甚な変化 宮崎正弘

驚くべき人口動態の統計がアメリカ人学者によって作成され、中国の過疎村の実態と人口流入に悲鳴をあげる沿岸部の対比が描かれた。
公式的な中国政府の統計は杜撰なもので、大まかな傾向が述べられても数字は機密扱いをうける場合が往々にしてある。国勢調査の発表とて地方政府の段階で「不都合な数字」は改竄されるため、曖昧な表現でおわることが多い。
それにしても、中国経済の近代化によって、いったい、どれほどの人々が農村を捨て、都会へ流入したのか。そして、あとどれほどの農民が都会での就労機会を狙っているのか?
米国ワシントン大学の人口学専門家、カムウィン・チャン(陳金永)教授がまとめた『中国における人口移動 1990――2005』では統計数字が明らかとなった当該十五年間に8000万人が故郷を離れ、都会部、沿岸部に就労したことが明らかとなった。
 http://www.washington.edu/discover/sustainability/nextcity/faculty/kam-wing-chan
ただし中国国内の人口移動は2006年以降もっと激しくなっており、おそらく2億人の移動があるが、最新統計は後年に待たなければならないだろう。
さて、以下の一覧は(A)が流失した人口の多い自治体別。(B)は逆に流入したところである。(単位は百万人)
 
A 人口が流失により減少した地域
 四川省(重慶を含め)   750万人以上
 河南省、安徽省、湖南省  500-750万人
 広西、江西、河北省    250-500
 貴州、山西、甘粛、山東、吉林、黒龍江、青海、内蒙古、陝西省など250以下
B 人口流入が激しい地域
 広東省           2300万人が流入した
 浙江省、上海市       500-750万人
 江蘇省、北京、       250-500
 福建、天津、遼寧、山西、寧夏、海南、雲南 250万人以下
 なおチベット、ウィグルも250万以下で人口が増えている。(数字は英誌エコノミスト、12年2月25日号)
この人口移動の激甚な変化は、その後も明らかに加速されており、2012年春節以後、職場に戻らない季節労働者らのために、各職場、メーカー、工場は地方にトラックを派遣して労働者を掻き集め、給与の上昇、待遇改善、社会保障の整備などが急速に進んでいる。
他方、沿岸部ではもはや労働者の流入によるコスト上昇より、地方へ工場を移転させて、安い労賃を確保する方が得策との判断から、急速な工場移転ブームが進んでいる。
地方都市によっては工業団地が整備され、以前より雇用の確保が容易となった。逆に労働者確保が難しくなった広東省では、産業構造の変質が迫られ政治課題となった。
杜父魚文庫

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