9198 ガラス細工のような米朝合意  古沢襄

今度の米朝合意はガラス細工のように壊れ安い。ロスレティネン米下院外交委員長(共和党)は、北朝鮮がウラン濃縮停止などを受け入れたことについて声明を発表し「北朝鮮の約束を額面通り信用してはならない」と懸念を表明している
それでもオバマ政権が米朝合意に踏み切った背景には、イスラエルがイランの核施設の攻撃を示唆するなど中東情勢が緊迫する中、今秋に大統領選を控えるオバマ政権にとって、朝鮮半島の緊張は控えたいのが本音、と産経の犬塚陽介特派員がワシントンから伝えている。
<【ワシントン=犬塚陽介】ウラン濃縮の一時停止などを盛り込んだ2月29日の米朝合意は、その期間やプルトニウム型の核開発をめぐって、早くも両国の解釈に温度差が生じている。朝鮮半島の「危機管理」を急ぐ米国と経済支援を渇望する北朝鮮の思惑が一致した合意は、事前に詰め切れなかった細部の解釈をめぐり、今後の交渉が紛糾する可能性も指摘され始めた。
29日に両国が同時発表したことから「リープデー・ディール(うるう日の取引)」と国務省高官が名付けた合意だが、早くも揺らぎが生じている。
北朝鮮は合意発表の際、ウラン濃縮や核実験の一時停止は「(米朝間で)実りある会談が行われている期間」と述べ、曖昧な限定条件を一方的に提示した。
また、米国側が「合意したことに疑いはない」と主張する寧辺の実験用黒鉛減速炉(5千キロワット)の無力化など、プルトニウム型の核開発の停止についても、北朝鮮は全く言及しなかった。
国務省高官も「この合意は逆行も可能だ。北朝鮮が約束を守るため、真剣さを示すことがポイントだ」と合意の脆弱(ぜいじゃく)さを認めた。オバマ政権は今後、北朝鮮と詳細を詰める方針だが、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員は、対北交渉では「文章の細部に悪魔が潜んでいる」と指摘し、交渉の先行きを不安視する。
とはいえ、米国が細部の解釈を後回しにしても「合意」の形成を優先させた背景には、挑発行為を予防する米国の「危機管理戦略」を深化させる絶好の好機ととらえたことがある。イスラエルがイランの核施設の攻撃を示唆するなど中東情勢が緊迫する中、今秋に大統領選を控えるオバマ政権にとって、朝鮮半島の緊張は控えたいのが本音だ。
だが、北朝鮮は過去にも米国のテロ支援国家指定解除後に核実験を実施するなど、数々の合意を破ってきた。下院のロスレイティネン外交委員長(共和党)は「北朝鮮の約束を額面通りに受け取れない」と述べ、米国が把握していない核施設で「核兵器開発を続けるだろう」と警鐘を鳴らす。(産経)>
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