北朝鮮の核武装への驀進をめぐる米朝合意の分析を続けます。日本ビジネスプレスからの転載です。これで今回分は終わりです。原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34694
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ムスダンというのは最小限、グアム島まで射程内に収める中・長距離のミサイルである。ニクシュ氏は北朝鮮が核弾頭をミサイルに装備することにいまや全力を挙げてきたとして、次のような警告をも発している。
「北朝鮮を巡る環境がこれまでのままだと、核弾頭のミサイル装備はこれからの1~2年の間に必ず実現されてしまう。今回の米朝合意はその展望を変えるとは思えない」
食糧獲得だけが合意の目的だとは思えない
米朝合意の内容を発表通り受け止めると、北朝鮮は米国側から栄養補助食品24万トン提供以外の譲歩をほとんど引き出さないままに、核やミサイルの 実験停止に応じたこととなる。では、北朝鮮がそれほどこの食糧、つまり栄養補助食品が欲しかったのか。ニクシュ氏はこの点についても興味ある論評をした。
「北朝鮮側の今回の譲歩には食糧獲得以外の複雑な政治的動機があると思う。なぜなら北朝鮮は昨年の最後の3カ月に中国から合計50万トンもの食糧 援助を得ているからだ。今は食糧危機はないため、今回の譲歩は今後の対米交渉でより大きな目標を目指すための切り札とするのではないか」
こう見てくると今回の米朝合意は欠陥だらけの構図が浮かび上がってくる。そしてタイミングも北朝鮮の動機も、なにか奇妙で、説明がつかないままなのだ。
特に日本にとって切迫した北朝鮮の核弾頭の小型化、軽量化の成功によるミサイルへの核弾頭装備という危機は少しも遠のいていないことが明白となるのである。
杜父魚文庫
9233 北朝鮮が合意に応じた真意とは 古森義久

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