日本にいるとイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザの武装組織との交戦が中東情勢にどのような影響と関連があるか、分かりにくい。
英ロイターは、これがイスラエルのイラン攻撃を意識したものだと認識して、エルサレムから情報を送り続けている。そしてイスラエル高官から「これは(イラン攻撃の)小規模軍事演習だった」という非公式な証言を引き出している。
「シオンとの架け橋」というイスラエル・ニュースがある。イスラエルの対外宣伝情報の一環なのだろうが、イスラエル軍の動きを毎日、詳細に伝えている。宣伝情報と軽視すべきではない。それにしても日本のイスラエル情報はお粗末の限り。
中東の原油に90%も依存している日本が、対外情報で英ロイターに遅れをとっているのは、情報軽視の日本の体質が抜けない証拠。防衛省は驚異的な成功率でガザからのロケット弾迎撃に成功したアイアンドーム(ラファエル社)の資料入手に努めるべきだろう。
<[エルサレム 13日 ロイター]イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザの武装組織が9日から続けていた交戦について、イスラエルの当局者は13日、イランとの紛争が起きた場合の有効な目安になったと語った。
イスラエル軍は9日、空爆でパレスチナ武装組織の指導者2人を殺害。これを受けてパレスチナ側の武装組織イスラム聖戦と民衆抵抗委員会が攻撃を激化させ、イスラエル側によると、同国南部に撃ち込まれたロケット弾は150発を超えたという。イスラエル軍とパレスチナ武装組織は13日に停戦合意した。
パレスチナ武装勢力からの一連のミサイル攻撃について、イスラエル高官は匿名を条件に、自国の防衛能力に対する「抜き打ち検査」的なものになったと指摘。イランとの間で紛争が起きた場合にどう対応するかの有効な目安になったとし、「ある意味、これは小規模軍事演習だった」と述べた。
さらに「もちろん大きな違いはあるが、『次の日』のシナリオに関する基本原則は同じようなものだ」とコメント。「次の日」とは、核施設への先制攻撃を受けたイランがイスラエルにミサイルで報復するケースを想定した発言と思われる。核開発を進めるイランに対し、イスラエルは単独攻撃も辞さない構えを見せている。
■イスラエル・ニュース
2012年 3月 13日(火)
****************************************************
*イスラエルとパレスチナ武装組織がエジプトの仲介で停戦に合意か。4日間でイスラエルに撃ち込まれたロケット弾は約200発だが死者は無し。パレスチナ側の死者は25人で大半が戦闘員。(P,H,Y)
*驚異的な成功率でガザからのロケット弾迎撃に成功したアイアンドームに世界各地の軍事関係者が熱い視線。開発したイスラエルのラファエル社は、これを機会に世界市場への進出を目指している。(P,Y)
3月12日(月)
****************************************************
*イスラエル国防軍のガンツ参謀長がイスラエル南部での情勢悪化により米訪問を見送る。米国では、米軍トップのデンプシー氏らとイランの核問題について協議する予定などが組まれていた。(P,Y)
*引き続きガザから数十発のロケット弾が撃ち込まれ、先週からの合計は150発以上に。うち1発はベエルシバの学校を直撃したが、休校だったため死傷者は無し。迎撃システムは故障中だった。(H,Y)
*イスラエルのワックスマン大使が、イスラエル南部に対するガザからのロケット砲攻撃を非難するよう国連安保理に要請。(P,H,Y)
*イランが、ガザ地区へのイスラエルの空爆を「無防備なパレスチナ人への戦争犯罪」だと批判。ガザでの死者数は18人に。(H,Y)
*ガザ地区からイスラエル南部に撃ち込まれたロケット砲を「アイアンドーム」が迎撃。迎撃を行った27発中25発の迎撃に成功。イスラエル防衛史上で最高の、驚異的な命中率を達成した。(P,H,Y)
3月11日(日)
****************************************************
*イスラエル国防軍が金曜にガザの武装組織PRCの指導者アルカイシをミサイルにより殺害。ガザから約100発のロケット砲攻撃があったため、国防軍はガザ地区の武器工場などに報復攻撃。(P,H,Y)
*ガザ地区では、国防軍の反撃により武装組織メンバー10人以上が死亡。葬儀に参加した民間人にも負傷者が出ているもよう。(Y)
*米国のクリントン国務長官が、イスラエル南部の民間人を狙ったガザからの攻撃を非難。米国務省のヌーランド報道官は「われわれはイスラエル南部への攻撃の激化を懸念している」と述べた。(P,Y)
杜父魚文庫
9271 ガザ武装組織との交戦はイラン攻撃の小規模軍事演習 古沢襄

コメント