9277 軍の支持弱い金正恩氏 米韓情報筋が分析  古沢襄

北朝鮮の金正恩氏には北朝鮮軍の支持が弱いとソウルの外交筋がみている・・・韓国の朝鮮日報が伝えている。米韓の情報筋は「金正恩氏はまだ北朝鮮の軍部から完璧な支持を得られていないため、六カ国協議を再開させることで軍の信任を得ようとしている」と分析しているという。
父親の金正日には趙明録という強力な軍トップの後ろ盾がいた。金日成の死後、後継者がすんなり長男の金正日に決まったわけではない。若手軍人の中には腹違いの弟・金平一の待望論があったという。
抗日パルチザンだった金日成がソ連から帰国後、1945年11月25日に金正日も母・金正淑と一緒に帰国した。この母子の護衛に当たったのが、同じ抗日パルチザンの趙明禄。金正淑も抗日パルチザンで射撃の名手だったという。
だが金正淑は1949年に亡くなり、金日成は金聖愛と再婚した。その間に生まれたのが金平一、最初から軍学校に進み、金日成も将来を嘱望したという。この事情が金日成の死後、権力闘争を招いたといわれる。
金日成時代にソ連の援助で北朝鮮軍が造られたが、軍幹部は抗日パルチザン世代で占められた。その頂点に立った趙明禄は、金正淑の遺児・金正日を後継者に推して、若手将校の金平一待望論を抑え込んだ。金正日が”先軍政治”を唱えた背景には、軍の掌握が第一という認識があった。
金日成、金正日が北朝鮮軍の掌握に成功したのに較べると、金正恩はまだ完全に軍を掌握しきれていない。趙明禄のような突出した軍トップの後ろ盾もいないし、軍部強硬派を抑え込む力量もまだ備わっていない。金正恩はこのところ北朝鮮軍の前線部隊の視察をひんぱんに重ねているのは、軍部の支持を固める過程にあることを示している。
最近では金日成・金正日時代と違って「米国との平和関係を望んでいる」(李容浩外務次官)のが若い金正恩の本音だという観測まで飛び出している。
<ソウルの外交筋は14日「韓米は、北朝鮮の指導者となってから3カ月にも満たない29歳の金正恩(キム・ジョンウン)氏が米国と高官協議を行い、李容浩(リ・ヨンホ)外務次官を米国に派遣して6カ国協議の再開推進の意向を明確にしたのは、自身の体制を安定させるためと判断している」と語った。金正恩政権は、対米関係の改善を安定に向けた重要戦略と位置付けているということだ。
同外交筋によると、韓米は「金正恩氏はまだ北朝鮮の軍部から完璧な支持を得られていないため、米国との高官協議を相次ぎ行い、6カ国協議を再開させることで軍の信任を得ようとしている」との分析で一致しているという。正恩氏は、2008年12月から中断している6カ国協議を再開させ、「核保有国」として米国や韓国、中国、ロシア、日本と同じテーブルで交渉することが体制安定に有利だと判断している、との見方だ。
こうした状況から、李容浩次官は米シラキュース大学マックスウェル行政大学院などがニューヨークで主催した民間学術セミナーに出席し「われわれは過去の世代(故・金日成〈キム・イルソン〉主席、故・金正日〈キム・ジョンイル〉総書記の世代)とは違い、米国との平和関係を望んでいる」と述べたという。また「私が6カ国協議首席代表を務める限り、2月29日に発表した米朝高官協議の合意(北朝鮮のウラン濃縮活動停止、米国の栄養補助食品支援)を守るので、心配しないでほしい」と米国側に説明したとのことだ。
金正恩政権は米朝合意で、韓国と米国が要求した「休戦協定の順守」を受け入れた。
政府関係者は「金正恩氏は経済的な理由からではなく、政治的な理由から対米関係を改善することが望ましいと判断したのだろう。こうした理由から、李容浩次官はニューヨークをたつ際、(ウラン濃縮活動の停止を検証する)国際原子力機関(IAEA)の査察団を近く受け入れることを示唆したようだ」と話している。(朝鮮日報)>
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