9288 ロムニーに中国から間接的、迂回献金   宮崎正弘

世にも奇妙な物語 ロムニーのPACに中国から間接的、迂回献金。共和党候補のなかで、激しく中国を批判しているロムニーが何故?
PACは政治行動委員会。法律がすこし修正され、献金額の上限が大幅に広がった。無尽蔵に選挙資金を支持候補に投下できる。殆どがテレビコマーシャルに費やされる。
とうに泡沫候補で消えているはずのサントラムやロン・ポールが、まだ戦線を撤退しないのは背後に大口献金者がいるからだ。
ラスのカジノ王のひとりアーデルソン夫妻はニュート・ギングリッチ(元下院議長)に凄い額の献金をした。ユダヤ系アーデルソンはギングリッチがプロ・イスラエルの旗幟を鮮明にしているからだ。
金本位復活を訴えるレーアマン(実業家)がロン・ポールに献金しているのは、ポールが金本位制度の復活を唱えているからだ。
さてロムニー。予備選でトップを走る穏健派。本来ならオバマ大統領批判に転じ、共和党優位を築くべき時期なのだが、いまなお党内混乱、頭一つ程度のリードしかできていない。(このままではオバマ再選もありうる情勢と共和党の選挙プロは憂慮しているが)。
ロムニーはリベラルな政治信条の持ち主で福祉医療保険などはオバマ路線とかわらないほどの穏健派。
1980年の共和党予備選で、レーガンVSブッシュのときに政治境遇的にはカーター大統領の軟弱外交が祟って、穏健派ブッシュより共和党がレーガンを候補に選んだように、オバマの軟弱路線が、サントラムやロン・ポール、ギングリッチの善戦を可能にした政治状況は酷似しているが。。。
さてロムニー。大金持ちにしてモルモン教徒。元マサチューセッツ州知事。庶民の悩みからは遠く、次期大統領にもし選ばれるとパパ・ブッシュのように中道政治を行うだろう。
NYタイムズ(3月17日)がすっぱ抜いた。ロムニーは間接的に中国の人権無視活動をしている企業に投資するファンドから献金を受けているという「不都合な事実」を。
「ベイン・キャピタル・アジア」という投資ファンドがある。ロムニー夫妻は、このファンドの創設者で、毎年、巨額の配当を得ている。出資額は、選挙キャンペーンが開始されて政治献金問題がからみだしてから減らしたものの25万ドル程度を出資している。
このベイン・キャピタル・アジアが中国企業のヴィデオカメラ部門を買収した。当該中国企業は「ユニビュー・テクノロジー」社という。
この会社は中国政府に最新鋭の監視用カメラ設備、部品を納める。つまり人道的見地から言えば、弾圧装置に手を貸している。米国政治の「ヒューマニズム」は、こうした遣り方にはヒステリックな声を上げる。
広場、大学キャンパス、寺院、モスク、教会、病院、公会堂、街路、商店街などありとあらゆる場所に監視カメラを設置しているが、中国政府はこれを「都市安全プロジェクト」と呼称し、公安対策費用を講じてきた。
重慶は50万台の監視カメラを設置し、42億ドルを投資した。広東省のあちこちに100万台、北京は五輪前に30万台の監視カメラを導入し、「都市の安全確保」に貢献した。
▼監視は犯罪防止、都市の安全が目的にせよ、同時に人権活動家弾圧の武器に転用出来る
ベイン・キャピタル・アジアが買収した企業「ユニビュー・テクノロジー」社は先端的な監視カメラで従来のヴィデオ録画ではなく、同時中継で画像を公安の拠点に送ることが出来る。誰々が集会に参加しているか、デモに誰々が加わっているかを遠隔地で瞬時に判別できるシステムである。たとえば甘粛省のチベット寺院では200名の僧侶のうち誰がデモに参加したかを識別し、「犯罪」の防止に役立った。
「ロムニー信託基金」を管理するマネジャーは「ベインキャピタル」が中国企業を買収したこととロムニー氏とは無関係、そもそもロムニー氏はファンドの運営に関わりがないし、投資の意思決定からは無縁である」とNYタイムズのインタビューに答えた。
しかしこのファンドの従業員らがロムニーのPACに政治献金をしている事実があり、説明に不透明な部分がある。
「ユニビュー・テクノロジーの監視カメラとシステムは『都市の安全』に貢献しているから、米国の対中制裁項目とは抵触しない」と抗弁するが、安全と犯罪捜査の武器は、弾圧の手段であり、コインの表裏である。奇妙な物語の一節でした。
杜父魚文庫

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