北朝鮮が四月に人工衛星と称する長距離ミサイルの発射実験を行うと発表したことは、新指導者となった金正恩氏がまだ軍を完全に掌握していないことを窺わせる。
黄海側から打ち上げられるミサイルは、ロケットの一段目が韓国西側の海域に落下、その後、石垣島上空を通過するとみられ、二段目はフィリピンの東方沖に落下するとしている。周辺国に与える影響は甚大なものがある。
二月二十九日に長距離ミサイルの発射実験を一時停止することで米朝が合意した。その舌の根も乾かないうちに合意を破棄したのだから、オバマ政権は裏切られたことになる。韓国の朝鮮日報はミサイルの米朝合意が半月で破棄されたので、「予測不能な状況」になったと報じている。
つまり米朝合意からわずかに十六日後に金正恩氏が決定を自ら撤回してしまった形だから「北朝鮮の内部事情が徐々に予測不能な状況に向かっている」と専門家は指摘している。
そしてミサイル発射実験の決定は、金正恩時代の政策主導権をめぐり、外務省と軍部が主導権を争った結果との指摘する。
金正恩時代の幕開けとともに、外務省が対米対話で影響力拡大に乗り出して米朝合意にまで漕ぎ着けた。これに対して軍部が反発を強めているといわれていた。この見方が正しければ、金正恩氏が北朝鮮の権力機関を全く掌握できないまま、外務省と軍部の争いに巻き込まれた。
それにしても長距離ミサイルが石垣島上空を通過するとは穏やかでない。沖縄はすでに北朝鮮ミサイルの射程圏内にあることを示している。
<北朝鮮は、来月行う「衛星」の打ち上げで、軌道などの情報を国際機関に通知しました。西側から発射したロケットの1段目は韓国西側の海域に、その後、石垣島上空を通過するとみられ、2段目はフィリピンの東方沖に落下するとしています。
朝鮮中央通信は17日、人工衛星を打ち上げる準備として「国際海事機関などに通知した」と報じました。また、海外から専門家や記者を招待するとしていて、平和目的の衛星をアピールする狙いがあるものとみられます。
一方、衛星の打ち上げに名を借りた長距離ミサイルの発射だと日本やアメリカなどが批判していることに対し、北朝鮮は、国営メディアを通じて「自主権の侵害だ」と反発しました。また、「計画した打ち上げを撤回すると思うのは誤算だ」と予定通り行う姿勢を強調しました。(テレビ朝日)>
<北朝鮮が16日に発表した通り、来月にもロケット「銀河3号」に搭載した人工衛星「光明星3号」を打ち上げれば、米国と長距離ミサイルの発射実験を一時停止することで締結した2月29日の米朝合意は事実上、破棄されることになる。
そうなれば、米国は合意内容に従い、北朝鮮に提供するはずだった24万トンの食糧支援を取り消し、金正恩(キム・ジョンウン)氏が望む対米関係改善も当面困難になるのは明らかだ。先月の米朝合意は、昨年末に金正日(キム・ジョンイル)総書記が急死した後、新指導者となった金正恩氏が権力掌握から2カ月後に下した外交分野で最も重要な決定だ。
ところが、北朝鮮は合意からわずか16日後に金正恩氏の決定を自ら撤回してしまった。これについて、韓国政府と北朝鮮専門家は「北朝鮮の内部事情が徐々に予測不能な状況に向かっている」と指摘した。
■外務省と軍部の主導権争い?
一部の専門家は、北朝鮮外務省主導で締結した米朝合意を軍部が覆したと指摘した。ミサイル発射実験の決定は、金正恩時代の政策主導権をめぐり、外務省と軍部が主導権を争った結果との指摘だ。
北朝鮮に詳しい消息筋は「金正日政権末期、外務省は軍部に押され、身動きが取れなかった。金正恩時代の幕開けとともに、外務省が対米対話で影響力拡大に乗り出したことを受け、軍部がけん制を始めたとみられる」と分析した。この見方が正しければ、金正恩氏が北朝鮮の権力機関を全く掌握できないまま、外務省と軍部の争いに巻き込まれたとの解釈が可能だ。
韓国政府の関係者は「金正恩氏の権力掌握能力はまだ完全ではないとみられる。金正恩氏が軍部の主張に振り回されている状況が相次いで観察されている」とした。今回の米朝合意が結ばれた2日後に当たる今月2日、金正恩氏が軍首脳部を引き連れ、戦略ロケット司令部を視察したことも、米朝合意を承認する一方で、軍部の機嫌をうかがう動きだったとの見方がある。
同関係者は「北朝鮮軍部は自分たちの発言機会を探っている。敵に対するスローガンをめぐり、軍部が必要以上に興奮しているのは、金正恩氏の本意ではない可能性がある」と指摘した。(朝鮮日報)>
杜父魚文庫
コメント