9299 ネパールのチベット人社会にも中国スパイが浸透  宮崎正弘

ダライラマ陣営の憂鬱、インドの保護領からカトマンズは中国へ傾斜中。インドは対中対決姿勢を柔軟に変えてしまったのか。
従来は「インドの保護領」も同然だったネパールが王政をやめて、インド系ヒンズー教徒の国が突如、無神論=マオイスト政権となり、インドからの自立という政治姿勢。これは中国の影響力がじわり浸透した結果のようだ。
つぎはバングラデシュが狙われるだろう。
ネパールの宗教はヒンズーが主流だが、チベット仏教の影響を強く受けた国民が一割ちかい。マオイスト政権と中国の利害は、この仏教排斥で一致する。
インド北部にダライラマ亡命政府があるため、通り道にあるネパールにはチベットからの避難民がヒマラヤを越えて流入し続け、一部はダライラマ亡命政府へ身を寄せるが、米国へ脱出をはかる若者もいる。
ことし二月の習近平訪米時、習の行く手には何処でもチベット留学生の「チベット独立」の旗幟が翻った。
カトマンズの仏教寺院のまわりをチベット人教徒は時計回りに巡礼する。そのなかには多くの中国からのスパイが混在している。
何時、どこでチベット仏教との集会とデモがあるか、ネパール警察に事前の通告がされるのは、在カトマンズ中国大使館からで、ネパール政府はデモ隊を弾圧し、活動家を拘束し、つまりは中国の顔色を窺う。背後にある政治的動機は中国からの援助である。
カトマンズのチベット人社会はおよそ18000名と見積もられ(在日ネパール人の数もそれくらい)、裏切り者がでるのは金融的問題をかかえてカネほしさから中国の第五列に成り下がったり、チベット国内にいる家族親族が脅かされているためで、中国のスパイ浸透は以前より強固である。
▼NGO組織にも北京のスパイが混入
中国でスパイの訓練をうけ、インド北部のダラムサラにあるダライラマ亡命政府に侵入している代理人もいる。ネパールとの国境、とくに中国側は厳重な警備体制がとられているが、ネパール側にはNGOの人権団体がチベットからの亡命者を救援する組織もある。国連の高等弁務官による亡命者保護とインドへの退去支援プログラムは依然有効である。
反対に中国の情報機関がNGOを名乗ってチベット人の往来を査察している。すでにチベットでは昨年三月以来、27名の僧侶が焼身自殺しており、ネパールでの反中国抗議デモ、集会が頻発する。
米国はこうしたチベット難民をネパールから五千名受け入れると表明したが、ネパールは中国の圧力を懼れ、「こうした移民希望者の名簿を作成せず、データを公開せず、基本的な集計を怠っている」という(英誌『エコノミスト』、3月17日号)。
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(読者の声)北朝鮮が来月に人工衛星を打ち上げるそうですね(怒)。今までは北朝鮮の北東部の舞水端里から打ち上げて日本の東北上空を通過するのが恒例でしたが、今回は北西部・平安北道鉄山郡の朝鮮西海衛星発射場から南方方向に打ち上げると発表されました。
これを受けてクリントン国務長官とヌーランド報道官は「非常に挑発的だ」という言葉で強く非難しているのがメディアでも報じられています。
NHKのニュースを見ていると、「北朝鮮は日本とアメリカに配慮して打ち上げ方向を変えた」と専門家の分析を記者が紹介して解説していましたが、私はこれに疑問を持ちました。
果たして北朝鮮は本当に日本に配慮したのでしょうか? 北朝鮮はそんなに優しいとは決して思いません。この時機にわざわざ発射地点と発射する方向を変えることに何か意味でもあるのではないかと思うのです。
23日に放送されたBSフジのプライムニュースにコリア国際研究所の朴所長が出演していましたが、アナウンサーからの質疑に対して「中国が北朝鮮へ日本円に換算して80億円の無償資金援助を行ったので、北朝鮮は当面は食糧問題に困らない」と回答したのを見て、中国が裏で糸を引いているのではないかということです。
米軍再編でグアムや豪州のダーウィンに軍事リスクが分散されることを受けて腹立たしく思っている中国が北朝鮮へ80億円もの無償資金という餌をぶら下げてバーター取引を行ったのではないかと考えました。
金正日が生きていたらこれに応じたかどうかは分かりません。しかし、金正恩が総書記に就いてからは事実上、中国の傀儡になったのではないかと観ています。
昨年10月にロシアのウラジオストクから北朝鮮の羅津まで鉄道を開通させたのは中国というブラックホールに吸引されるのを嫌ってきた金正日がロシアを引っ張ってくる事で中国を牽制したかったのではないかと考えたのですが、中国が羅津港を既に借り上げていて自分達の好きなように造ってしまおうという思惑をよそに「さすが金正日だなぁ。中国とロシアを天秤にかけてうまくバランスを取っている」と妙に感心してしまったのを思い出します。
ところが金正日が死去し、正恩が後を継いでからは状況が一変したのではないかと思うのです。国家運営の右も左も分からない正恩を絡め取ることに中国はさほど苦労していないのではないでしょうか。
そして北朝鮮の人工衛星打ち上げを後ろ盾のように利用して、軍事的なリスク分散を図るつもりのアメリカを恫喝しているのではないでしょうか。
今回の発射地点から南方へ直線を引くと尖閣諸島のみならずフィリピン、グアム、そしてダーウィンが引っ張った直線からすぐの距離にあることが分かります。だからアメリカ側がわざわざ怒りを隠すことなく「非常に挑発的だ」と強い口調で非難したのではないかと思えてなりません。
一方、中国の報道官が会見で「北朝鮮の科学技術の発展に貢献すべきだ」などという素っ頓狂なことを言いましたが、私には報道官が止まらない笑いを必死で噛み殺しているようにしか見えませんでした。
また中国はセーシェル諸島に軍事基地を造る目論見があるという報道もあり、国際情勢はいよいよ風雲急を告げるのかと訝しげに観ています。本当のところはどうなのか皆目見当がつきません。宮崎先生がどのようにお考えなのか伺うことが出来れば幸いです。(長靴下のブッチャー)
 
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(読者の声)北朝鮮の人工衛星(ミサイル?)打ち上げが迫ってきました。沖縄県の先島諸島には、PAC-3を関東や九州から移動、展開することが検討されているようですが、動画サイトに自衛隊のイージス艦による弾道ミサイル迎撃テスト成功の様子がアップされています。
ノドンを想定してのSM3ミサイルによる迎撃試験だったようですが見事成功。


動画を見ると、自衛隊の錬度の高さはたいしたものです。自衛隊は米軍の補完でしかない、とか否定的な声もありますが、結局は国土防衛に対する日本国民の意識がすべてです。
ソマリア沖での海賊退治で海上自衛隊は日本海軍と名乗っていますが問題にするマスコミもありません。そろそろ戦後の平和ごっこをやめて、きちんと近隣諸国からの圧力に対して向き合う時期なのでしょうね。(PB生、千葉)
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(読者の声)北朝鮮のミサイル実験の狙いと背景は何か、以下考えてみました。
まず米国と会談して一週間もたたないうちにミサイル実験を発表したということは、米国が了解済みなのではないか。
北朝鮮の敵は、地政学の第一原則「隣国は敵対する」からみて中共とロシアである。日本は当面問題にならない。このうち中共は古代から朝鮮の宗主国として支配してきた恐ろしい敵だ。
そして中共は文字通り「奇貨おくべし」で金正男を押さえている。彼を使えば朝鮮の長子相続慣習でいつでも北朝鮮に宗主権を行使できる立場にある。
一方、米国は北朝鮮にとってはるか海のかなたで敵国ではない。朝鮮戦争は遠い昔の話しだ。むしろ地政学の第二法則「敵の敵は味方」に従えば中共を共通の敵とする友好国だ。
そこで北朝鮮は、今回イスラエルに敵対するイランへの核とミサイル軍事技術援助を凍結する代償に、米国から食糧援助を手に入れたのではないか。
こうした目で見ると、今回のミサイル実験のルートが面白い。すなわち、前回の東ルートから転じて南ルートは上海をかすめている。明らかに中共への威嚇だろう。
こうした動きを見て米朝会談の蚊帳の外におかれた中共は焦っている。早速50万トンの食糧支援を申し出たと言う。
今後、北朝鮮が核を放棄することはないだろう。米国にとっても北の核ミサイル基地は北京や上海を指呼の間に望む絶好の位置にある。むしろ対中牽制のために北の核を温存したいのではないか。
極東の多角的な力関係は今後どう展開するか分からない。今までの米朝対立の冷戦思考ではついてゆけないだろう。ただし北朝鮮がいくら米国と近づいたとしても、日本にとり朝鮮は地政学的な敵であるから油断できない。
マキャベリは「隣国を支援する国は滅ぼされる」と喝破している。その意味で沖縄の米軍は、日本にとって貴重な人質であるから米軍基地はしっかり維持しなければならない。(東海子)
 
(宮崎正弘のコメント)奇しくも北朝鮮問題にご意見が集中したようです。パトリオット・ミサイルが本当に抑止力となるかどうか。本番さながらの軍事練習ができるので、日本の防衛を考えるにも良いチャンス。
ともかく国家防衛の軍隊が雪祭りとか瓦礫処理とかに動員される愚は繰り返してほしくないですね。
 
杜父魚文庫

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