外国通信社の記事を読むと、日本の視点では捉えられないものがある。仏AFPが伝えた過去五年間の通常兵器の輸入リストで最も多いのは、アジア・オセアニア地域だったというのは意外だった。武器輸出はよく記事に出るが、武器輸入が話題となるのは少ない。
日本は武器輸出が禁じられているが、武器輸出国の上位は米国、ロシア、ドイツ、フランス、英国。これは一般にも知られている。だが武器輸入国のトップは紛争が絶えないアフリカだと思っていた。それがアジア・オセアニア地域の44%でトップ、アフリカは9%に過ぎない。
アジア・オセアニア地域の武器輸入国の上位はインド(10%)、韓国(6%)、中国(5%)、パキスタン(5%)、シンガポール(4%)。この五カ国の兵器輸入だけで全世界の30%を占めている。
これだけの武器がアジア・オセアニア地域に流れ込んでいるのだから、アジアで紛争が起これば戦闘規模は想像を超える。この現象は中国の軍事力強化と、それを警戒した周辺各国が争って軍備強化の走っている現状を反映している。
韓国の武器輸入が6%と突出したのは、北朝鮮の軍備強化の反映といえる。武器輸入の趨勢をみるかぎり、世界で一番、危険なゾーンはアジアという見方も出来る。武器輸入が飽和点に達すれば、手間と時間がかかる外交交渉よりも、局地戦争に訴える強硬論がどの国でも幅をきかすからである。
<【3月19日AFP】ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)は19日、過去5年間で通常兵器の輸入が最も多かったのはアジア・オセアニア地域だったなどとする世界の兵器取引についての報告書を発表した。
アジア・オセアニア地域は全体の44%を占め、ヨーロッパ(19%)、中東(17%)、南北アメリカ(11%)、アフリカ(9%)が続いた。国別の1位は全体の10%を占めるインドで、韓国(6%)、中国とパキスタン(いずれも5%)、シンガポール(4%)が続き、これら5か国で全世界の兵器輸入の30%を占めていた。
2006年と2007年の調査で1位だった中国は、今回は4位に順位を落とした。SIPRIは「中国の兵器輸入の減少と同時に、中国製兵器の品質向上と輸出増加がみられる」と指摘。中国製兵器の輸出は、主にパキスタン向けが増えたが、それ以外の重要な市場には十分に浸透していないと分析した。
それでも中国の兵器輸出量は、米国、ロシア、ドイツ、フランス、英国に次ぐ世界第6位になっている。(AFP)
杜父魚文庫
9302 アジア・オセアニアは武器輸入で世界トップ 古沢襄

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