「中国の重慶と北京でクラシックギターのコンサートがあり、三泊四日で出掛けます。戻りは(月)の夜。ギターで中国へ行くのは二度目。前回は現地のギター愛好家との交流会でしたが、今回はコンサートを予定しています」と次女から簡単なメールがきた。
四十九歳になった娘のことだから、親がいつまでも心配しても始まらない。だが政争で緊張状態にある重慶でギター・コンサートというのだから、やはり気になる。二十日夜には中国のネット、ツィッター空間で軍事クーデターの噂が飛び交った。
いろいろな情報が流れているが、本当のところは分からない。現地にいても分からないであろう。政争は常に秘かに準備され、ある日、突然に爆発する。
朝日新聞は<<中国共産党が、指導部への忠誠を求める6項目の内部通知を党内各部門に出したことが分かった。重慶市副市長の米総領事館駆け込み事件で同市書記の薄熙来(ポー・シーライ)氏を解任したことを受け、党内で広がる動揺や反発を抑え込むための異例の指示。検閲や盗聴などの監視活動を強めることも盛り込まれている。>>と報じている。
このような内部通知が出ること自体が、重慶で起こった薄熙来氏の解任事件が、一部の幹部の間で反発の動きがあることを示している。政権の不安定化を避けようと胡錦濤国家主席・温家宝首相ら指導部が事態を極めて深刻に受け止めて、押さえ込みに必死となっていることの表れともいえる。
軍事クーデターの噂も偶然ではない筈だ。胡錦濤執行部に対する牽制の噂なのかもしれない。落ち目といわれる江沢民派が”窮鼠、猫を噛む”こともあり得る。
それにしても日本人は平和に慣れ過ぎて、危機とか危険に対して鈍感になっている。戦時中に生まれ、大空襲の東京で中学に通った私たちの世代は、危険から身を守る術を自然に学んできた。何よりも必要なことは、危険には近づかない用心さである。
オヤジの心配をよそにして、今頃、娘たちはギターを抱えて中国に向かう機中にある。
杜父魚文庫
9322 渦中の重慶でクラシックギター・コンサート 古沢襄

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