「新党のための新しい仕掛けだよ」。たちあがれ日本の平沼赳夫代表が国家経営志士議連を設立した真の目的についてある設立呼びかけ人はこう打ち明けた。
議連には、東京都の石原慎太郎知事の影がちらつく。活動方針に、かねて石原氏が主張する国家会計への複式簿記導入や憲法改正などが盛り込まれたことがその証左だ。議連が今後まとめる憲法や教育、統治機構改革などへの見解や方針は新党の政権構想やマニフェスト(政権公約)に盛り込まれる公算が大きい。
狙いはそれだけではない。設立趣意書では「一般債務は1千兆円を突破し生活保護受給者が200万人を超えるに至った」などと財政再建の必要性を強く打ち出した。石原氏は、消費税増税は不可避と考えており、23日の記者会見でも「消費税は経済への悪影響が一番少ない。議論されてしかるべきだ」と断じた。民主、自民両党などの中堅・若手が議連に集結し、消費税増税の早期決着を打ち出せば、優柔不断な民主、自民両党執行部も無視できないと踏んだのではないか。
そしてもう一つ。議連の動きは、新党構想の発案者である国民新党の亀井静香代表を牽(けん)制(せい)する意味合いもある。新党構想を主導するたちあがれ日本の園田博之幹事長らは消費税増税に反対する亀井氏らの新党参画を強く警戒する。連携を模索する大阪維新の会も亀井氏の「守旧派色」へのアレルギーが強いからだ。議連が消費税増税に賛同すれば、亀井氏の動きを封じ込めると考えたわけだ。
平沼氏は23日夜、亀井、園田両氏らと都内で会談したが、消費税増税への対応はなお平行線をたどったとみられる。ただ、亀井、石原両氏の絆は固い。園田氏らが露骨な「亀井外し」に動けば、石原氏の新党への意欲をそぎかねない。
消費税増税法案が国会に提出されれば、衆院採決が最大の焦点となることは間違いない。民主党の小沢一郎元代表らが造反に動く中、民主、自民両党が大連立を視野に法案成立で手を結ぶのか。それとも自民党は倒閣を優先させ、法案否決に動くのか。いずれにせよ、議連の動きが法案の成否を握ることは間違いなく、流れ次第では政界再編の先(せん)鞭(べん)をつけることになる。(産経・佐々木美恵)
杜父魚文庫
9328 消費税増税法案の成否握る「国家経営志士議連」 古沢襄

コメント