果てしなく続く民主党の社会保障と税の事前審査。そこで消費税増税に理解を求める前原誠司政調会長だが、24日未明にもつれ込んだ6日目の合同会議では、前原氏が電話で野田首相に判断を仰いだ。首相は「今日はもういい」と答えただけ。前原氏の指揮で深夜の議論を続けても進展はないと判断したようだ。
この法案に反対の小沢一郎元代表は「とても採決するような状況にはならない。党内の議員も表だって反対と言わない人でも、みんな腹の中は反対だ」と関連法案の党内了承をけん制する。
野党・自民党の谷垣総裁は「解散してルールに基づいて物事を進めれば動く」と、野田首相が衆院を解散すれば消費増税法案に協力する考えを重ねて示している。だが総選挙を実施すれば民主党が惨敗する状況下で自民党の要求に応ずるわけにはいかない。
さすがに切羽詰まった政治状況で、小沢一郎元代表に近い民主党の輿石幹事長までが北京で同行記者団に「月内に党内の了承手続きを終え、法案を国会提出できる」と言わざるを得なくなった。とにかく法案だけは国会提出しないことには、民主党政権が瓦解するという危機感を持ったようだ。
民主党の身内からは、前原氏の調整能力に疑問符がつく声もあがるが、当の前原氏は「決めるときは、決める!」と言い切った。泣いても笑っても今週27日がタイムリミット。どんな着地をみせるのか、野田内閣はいよいよ正念場を迎える。
<「決めるときは、決める!」-。民主党の前原誠司政調会長は25日、こう力強く宣言した。消費税増税関連法案に関する民主党の事前審査。前原氏の指揮下で行われている合同会議の議論はすでに30時間を超えた。タイムリミットは27日。
野田佳彦首相が「命をかける」と明言した法案の月内閣議決定を考えれば、それがギリギリだ。だからこその「決める」宣言だが、延々と議論を拡散させてきた前原氏の調整能力には、身内からも懐疑的な声が出ている。(酒井充)
新潟市で25日に行われた党主催の社会保障と税の一体改革説明会。前原氏は、「いままで丁寧な議論を重ねてきたが、タイムリミットはある」と述べ、事前審査の決着に向けた並々ならぬ決意を示した。
説明会後は記者団に「3月の閣議は30日が最後で、(法案の)印刷に3日ほどかかる。おのずと日程は出てくる」と強調。27日という期限を自ら設定した。
前原氏は昨年末の一体改革大綱素案を了承する党内手続きでは最終日に顔を出しただけだったが、今回は会議にフル参加。「お尻は切らない」と宣言し、粘り強く党内の増税反対派の説得を重ねてきた。
しかし、その配慮は完全に裏目。反増税派から注文が出るたびに妥協を重ねると、反増税派がさらにハードルを上げるという悪循環が続いた。14日から3日間の予定で始まった事前審査は出口の見えない泥沼会議の様相を呈している。
反対派に押し込まれ続ける前原氏は25日のNHK番組で、“絶対防衛ライン”を示した。「数字を条件とすることは絶対にダメだ」。増税の前提条件として経済成長率などの具体的な数値目標を盛り込むことはできないと断言したのだ。
まさに政調会長としての真価が問われるシビアな攻防。だが、その手腕に大きな疑問符がついていることも事実だ。
「民主党の議員は頭が良く攻撃精神の旺盛なのが多い。これは野党に適しているが、与党には適さない」
藤井裕久税制調査会長は23日の講演で党の現状に苦言を呈した。野党時代に党代表として自公政権を鋭く攻めた前原氏のことも念頭にあったのは間違いない。
前原氏への不信感を募らせている人物がもう一人。19日に前原氏と会談し、「任せる」と話していた野田首相だ。23日の参院予算委員会では、前原氏のもとで果てしなく続く党内議論に業を煮やしたのか「必要ならば私がいつでも対応したい」と自ら調整に乗り出す考えを示した。
24日未明にもつれ込んだ6日目の合同会議では、前原氏が電話で首相に判断を仰いだが、首相は「今日はもういい」と答えただけ。前原氏の指揮で深夜の議論を続けても進展はないと判断したようだ。
ある政務三役は前原氏を、こう当てこする。
「みんなにいい顔して、あわよくば野田首相の後をやれると思っているからいけない。4人目の民主党の首相はあり得ないのに…」
前原氏への風当たりは、日に日に強まっている。(産経)>
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