韓国の朝鮮日報が報じた「北朝鮮空軍の飛行訓練、大幅に増加」記事は、金正恩体制の新しい動向として注目しておく必要がある。韓国国防部は金正恩氏が一月に北朝鮮空軍の視察を集中的に行って以降、例年に較べて二倍近い航空燃料を使った戦闘訓練が開始されたとしている。
以前にも北朝鮮空軍の実力について書いたことがあるが、金正日体制下では航空燃料の使用が厳しく制限され、戦闘機を操縦するパイロットの技量が落ちていることを指摘した。日本の航空自衛隊や韓国空軍の技量にはとても及びもつかない。
それが、ここにきて一日で最大六五〇回以上の飛行訓練が韓国に確認されている。このことは例年の二倍近い航空燃料が使用されていると韓国情報当局は分析した。
北朝鮮は中国から年間50万トンの石油の援助を受けているとみられるが、北朝鮮軍が使える分は30万トン程度。成田空港で1年間に使用するジェット燃料の量は380万トン。日本の自衛隊が、1年間に使用する石油は150万トンだから、あまりにも規模が小さい。
この結果、訓練不足からくる北朝鮮空軍の最新鋭戦闘機ミグ23の墜落事故が頻発していた。明らかにパイロットの訓練不足で劣勢にある北朝鮮空軍の練度強化に金正恩体制が乗り出した。
これは金正恩支配が固まっていない現在、北朝鮮軍部が金正恩氏に強く迫ったことではないか。民間の石油使用を削ってでも、軍用の航空燃料をふんだんに使うとなれば、国民の間から不満が鬱積するから、金正日体制下ではしなかった冒険に踏み込んだことになる。。
<北朝鮮空軍による平時の飛行訓練は韓国空軍に比べて非常に少ないが、先月以降、1日最大650回以上の飛行が確認され、訓練を強化していることが28日までに分かった。
北朝鮮空軍は、これまで訓練がなかった週末にも訓練を行うようになったほか、韓国空軍の戦闘機がスクランブル発進する地点まで南下することもあったという。
韓国政府筋は28日「北朝鮮空軍による最近の飛行訓練回数は、例年の冬に比べて非常に増加している。現在、その背景についてさまざまな観点から分析を行っている」と語った。さらに「金正恩(キム・ジョンウン)氏が1月に空軍を集中的に視察してから、このような変化が出てきたことに注目している」と話した。
韓米両国の軍当局は、北朝鮮空軍は最近の訓練強化に伴い、例年に比べ2倍近い燃料を使ったものと予想されることから、戦時用の備蓄油にも手をつけたかどうかについても分析を進めている。
韓国軍筋によると、北朝鮮空軍の戦闘機は昨年まで、普段は1日平均100回未満、訓練が比較的多くなる冬季でも1日最大300-400回程度しか訓練を行わなかったという。これは、平時でも1日平均700-800回飛行訓練を行う韓国空軍に比べると非常に少ない。
また1990年代以降、北朝鮮空軍戦闘機による1日の飛行回数は、最大でも450-500回程度にとどまっていた。
ところが最近は1日650回以上にまで飛行回数が増加しており、韓米両国の軍関係者を驚かせている。上記の韓国軍筋は「1日に650回以上飛ぶのは、ここ十数年間では間違いなく最高記録だと思う」「韓国空軍のF16は、1回の飛行で最低200万ウォン(約14万6000円)から300万ウォン(約21万9000円)以上の費用が掛かる。
北朝鮮の戦闘機による飛行回数増加に伴う追加費用について正確には分からないが、急増しているのは間違いないだろう」などと述べた。
北朝鮮空軍はこれまで、通常は週末には訓練を行ってこなかったが、最近は週末や休日にも訓練を行っていることが確認された。そのため韓国空軍のパイロットもこれに備え、週末と休日にも待機を始めたという。
韓国空軍は北朝鮮空軍の燃料備蓄量をおよそ1カ月分とみている。しかし最近になって北朝鮮は飛行回数を大幅に増やしていることから、戦時用の備蓄燃料を一部使用した可能性が高い。韓国軍当局によると、北朝鮮が訓練に必要な航空燃料を海外から追加で輸入したという情報は確認されていないという。(朝鮮日報)>
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