共青団が逆転勝利したばかりの香港で、守旧派とつながる不動産王、前政務官など逮捕。香港経済を揺らす激震。
新鴻基(サンホンカイ)地産集団と言えば、香港不動産業界四天王のなかでもトップ。香港財物第一位の李嘉誠率いる「長江実業」、ヘンダーソンランド(恒基兆)と並び、トップ御三家は四位の新世界発展集団には水をあけてきた。日本で言えば三菱地所か、三井不動産か、森ビルほどの大企業だ。
なにしろ新鴻基地産所有の摩天楼群は香港を埋め尽くすかのような壮観を誇り、さらには北京、上海、広州にも進出、その勢いは竜虎のごとし、だった。
しかしこの業界地図は塗りかわる可能性がでた。
四位の新世界は副業だった周大福(金ショップ・チェーン)のほうが活況を取り戻しつつあり、また長江実業は李嘉誠が現ドナルド・ツォン行政長官と親しく、また先日の選挙で敗北した唐英年をつよく推薦した経緯があり、これからの政治姿勢によっては変化がでるだろう。
3月29日、突如、新鴻基集団を率いるふたりのトップ、郭(トーマス、レイモンド)兄弟が「賄賂」で逮捕された。激震が走った。
同時に、同社から多額(数千万香港ドル)の賄賂を受け取っていた香港政庁ナンバーツーの許仕仁(前政務司長)が逮捕された。
許仕仁は現職の政商協委員をつとめる大物、捜査対象とするには背後の見えない権力の闇があって警察は手出しができない。官民癒着の典型、腐敗官僚の見本などという風評は以前からあがっていた。
許は新鴻基地産のふたりのトップに次に香港政庁が払い下げる土地の情報などを提供し、みかえりに巨額の賄賂や豪邸を建てさせたりしたという。
今回の逮捕は独立検察チーム(香港廉政公署)があたり、銀行口座など「証拠」を多く手中にしてから許や郭兄弟の家宅捜索も行われた。
香港マスコミは右も左も、朝から晩まで一面から二面をつぶすほどの大騒ぎ、ともかく大ニュースなのである。
▼三人兄弟って何処の国でも仲が悪いなぁ
郭丙江(トーマス、60歳)と郭丙連(レイモンド、58歳)は三人兄弟の次男と三男。長男の郭丙湘(ウォルター)はかつて父親から譲られて同社会長だったが、母親と馬が合わず、くわえて愛人問題が発覚したり。
1997年にはギャングに誘拐されて六億香港ドル(米ドル換算で7730万ドル=日本円にすると62億円相当)もの身代金を支払ったりの御難続きで、母親と組んだ次男と三男から追い出された経緯がある(ついでならが李嘉誠の長男も誘拐され巨額の身代金をマフィアに払った。中国圏では警察に誘拐を訴えることは稀、ネゴシエーターを通じてカネで解決するのが伝統)。
新鴻基地産はもともとロバート郭が1963年に香港不動産ブームを予見して創設し、おりからの経済発展とともに急成長をとげた。新鴻基地産から枝分かれしたのが、香港不動産歳二位のヘンダーソンランド(恒基兆地産)である。
香港株式市場に連鎖反応、株価をおおきく下げた(30日には同社17%下げた)。新鴻基の時価総額は372億ドル(3兆1600億円前後)である。また郭ファミリーの資産は183億ドル(邦貨換算で、1兆5000億円ほど)。
事情通は次の分析をする。
「これは先日の香港行政長官選挙で梁振英が、本命と見られた唐英年に逆転勝利した直後だけに、政治的思惑がつよい。まさに守旧派、つまり江沢民とつながる唐英年や彼につながる香港実業界の既存勢力を追い詰める決定打だ。新長官になる梁振英は胡錦涛、李克強ら共青団に近い。香港の不動産業界はもともと儲けすぎ、投機商品との批判が強く、新行政長官の梁振英は低所得者用住宅をたくさん造ると公約しているから大手デベロッパーは戦々恐々だろう」。
穿った見方がもう一つある。共青団系がここまでの攻勢をかけているのは、上海派のボス=江沢民が死亡したのではないか、という風評がまたまたネットに流れている。たとえば下サイト。
http://forum.dwnews.com/threadshow.php?tid=929965&extra=page%3D1
杜父魚文庫
9381 香港で共青団市長が当選した後の激震 宮崎正弘

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