9399 「暴富」が幸福だの道徳だのを他人様に説く?  宮崎正弘

ボーアオ会議で「幸福論と道徳」を講演したのは誰?李鵬元首相の長女、李小琳さまデス。猛烈な反論がネット世論で・・・。
4月1日、海南省のボーアオで開催された「アジア経済フォーラム」(ダボス会議をまねて毎年、海南島で開催。これまでにも中曽根、小泉らが参加し、ことしの日本側代表は福田康夫)の前夜祭的な青年指導者円卓会議で、「幸福」について道徳を交えて講演した著名な中国人女性がいた。
「射幸心は欲望が根源であり、欲望は人を幸福にするより不幸にする。モノを重視し、酒池肉林の欲望の世界から脱し、腐敗をなくさなければ屍をさらすことになる。吾々は欲望を抑え、倹約を励行し、道徳を守ることを国論にして、健康的生活を送るべきだ」とのたまわった(講演要旨は『博聞新聞網』から拙訳。4月3日)。
講演した主は李小琳(中国電力国際発展公司CEO)。言うまでもなく李鵬元首相の長女。
彼女は李鵬が現職の頃、23歳で原子力機関の副主任におさまり、時折、黒塗りの大きなリムジンで香港の有名ブティックにのりつけ、ボディガードを従えて山のようなショッピングをしている現場を香港のメディアにパパラッチされた。
肝心のボーアオ会議は2日から3日にかけて行われ、李克強副首相が基調演説、ゼーリック世銀総裁、周小川・中国人民銀行総裁、マリオ・モンティ伊首相らが参加した。
その本会議のことはそっちのけで、ネットには無数の李小琳批判がでたが、典型をひとつ。
「『暴富(太子党の金持ちを指す)』が幸福だの道徳だのを他人様に説く? 万元の衣服に身を包み、数十万元の時計をはめて、数千万元の豪邸に住み、数百万元の外国車に乗っている人が道徳をとくなんておこがましくもあり、ちゃんちゃらおかしい」
このボーアオ会議の直前、北京で目撃された情報によれば、「43歳におなりの彼女がめされていたお洋服は1万4000元の最新のエミリオ・プッチで御座いました」(同紙)。
(編集部註 14000元は20万円弱。エミリオ・プッチ<Emilio Pucci>は日本でも三越、伊勢丹など十数店舗を展開する高級ブティクで、本社はイタリアのフィレンツェ。
    
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 読者の声 READER‘S OPINIONS どくしゃのこえ 読者之声
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(読者の声)改めて渡部惣樹著『日米衝突の根源』(草思社)を読み、これは反米、嫌米層はもちろん、親米者にも必見の書だと思います。
この本のP397に次のような記述があります。
「ボストン周辺の名家は、アジア貿易で稼ぎ出した利益を惜しみなく高等教育機関に拠出しています。ハーバード、エール、プリンストン。こうした有名な大学には支那貿易で得た巨富の一部が注ぎ込まれました。その利益のほとんどがアヘン密売から得られたものです」
最近、これらの大学への中国人留学生が急増しています。彼らはそこが中国民族の膏血を搾って築かれたインフラであることを知っているのでしょうか?支那人にも必読の本です。
さてこの本のP452に次の記述があります。
「(セオドア)ルーズベルトは、アメリカ社会のリーダーたるべき最優秀人種WASP衰退の原因は、戦いの心、死を恐れない勇気を喪失したことにあると考えていました。戦いの場は、凶暴な自然がどこまでも広がり、“野蛮な”インディアンが跋扈する西部が提供していました。しかしその西部は1890年に喪失しています。もはやアメリカ人魂の発露を要求される舞台は国内から消えてしまったのです。だからこそ、アメリカン・エリートは劣等な移民たちのもたらした腐敗に染まってしまったのです。」
セオドアは日露戦争の戦後処理を仲介したことで日本人には好意的に受け止められています。新渡戸稲造の《武士道》を高く評価したことでも知られています。
セオドアの先祖はオランダ系の新教徒の名門一族(ニューヨーク・ニッカーボッカー)です。セオドアはハーバード大で、上流階級子弟だけがメンバーの排他的学生組織ポーセリアン・クラブに加入を認められました。
エール大学のスカル・アンド・ボーンズはブッシュ大統領がメンバーだったことで我々の人口にも膾炙していますがそれと類似の組織です。
セオドアは「コロンビア大学で、ジョン・バーゲス教授から法学を学んでいます。
ハワイ共和国大統領ドールに、アジア人排斥の仕掛けを盛り込んだ憲法の立案をアドバイスした気鋭の学者です」(P400)。
「移民の急増によって必然的に引き起こされた異文化との接触は、アメリカの若いエリートの心に、“アメリカ人とは何か”の問いを否応なしに突きつけることになりました。ルーズベルトが母国の歴史に強い関心を持ち、北方ゲルマン民族が築いてきた先祖の生き方を学べば学ぶほど、優秀であるはずのゲルマン民族が劣性民族であるはずのケルト人(アイルランド人)やアフリカ人種(黒人)に圧倒される現実に悩まされることになりました。この悩みは(ハーバード)大学全体を覆っていました」(P398~9)
百年以上前の異国の若きエリート層、指導者予備軍のこんな意識は驚くばかりで想像外なものです。何て偏狭な考えだと思いますが、セオドアはじつに真剣なのです。彼らの思想空間は特異なものだったということはよく踏まえておくべきです。
セオドアはマハンの著作《海上権力史論》(1890年)に「まさに我が意を得たりの思いでした。」(P416)
「ルーズベルトがここ(ハワイの戦略的重要性)で警戒している外国とは日本のことでした」(P415)
アメリカがハワイを併合したのは1898年でした。セオドアはその時海軍次官の要職にあってハワイ併合を対日警戒の立場から実行したのでした。当時日本海軍の増強は急速でした。「臥薪嘗胆」の標語を掲げての対露戦略の真っ最中だったのです。
しかしアメリカは単純にそうは受け止めていなかったのです。自国への脅威を感じていたのです。アメリカは日本人の思想空間を理解していません。ここに日本の対米外交(政府・外務省だけでなく海軍も含め)の不在と蹉跌を思いますし、国家存亡すれすれの大破滅をきたす萌芽が見えます。
それにしてもアメリカ指導層の意識 ーゲルマン民族はもっとも優秀であり、他人種・他民族と常に戦っていなければ魂は失われるー はきわめて特異です。いったいどんな「魂」なんでしょう。
思うに「アメリカ人」といってみたところの正体が自分たちで掴みきれなかったのでしょう。掴もうにもそういうものが無かったのでそれを見つけようと必死だったのでしょう。
冒頭引用文の終わりにある“劣等な移民たち”とは中国人や日本人の黄色人種、そしてケルト人(アイルランド人=カソリック教徒)、黒人のことです。
こうした他人種、他民族への排他性と攻撃性、それにともなう領土=勢力拡張欲はゲルマン民族の宿痾なのだとつくづく思います。
日本人はそんなものを持ち合わせていません。古来その必要も必然性も無く、遺伝子内にそんな宿痾は刻まれなかったからです。
しかし19世紀後半以降彼らがアジアまで勢力を伸ばし日本に接触して来たことで、絶えず我が領土、我が人的資源、我が金融財産資産を奪われ続けることになったのです。これが我が日本の宿痾です。
人間個人で見れば他者を攻撃せず、清く正しく生きているのですから美徳と申せますが、凶暴な生存競争を掻い潜らなければならない国際社会では膏肓に入る病です。(有楽生)
(宮崎正弘のコメント)渡部さんはカナダ在住ですが、つい一月初旬まで日本にいました。高山正之さんと一緒に食事したり、西尾幹二先生主催の「路の会」でも講演して貰いました。が、渡部さんは条件付きTPP賛成でした。
杜父魚文庫

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