米大統領選の共和党候補者指名争いは、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が3日行われた3つの予備選(中西部ウィスコンシン州と東部メリーランド州、首都ワシントンDC)を制したことで共和党の本命候補として抜け出した格好となった。
英ロイターはオバマ大統領と戦う11月の本選に向け火ぶたが切って落とされた・・・としているが、その本選は「いばらの道」だと長文の解説を掲げた。
USAトゥデー紙とギャラップが2日発表した世論調査の結果でも、オバマ大統領が支持率でロムニー氏を4ポイント上回り、1月に同世論調査が始まってから最大の差がついた。無党派層では、この差は8ポイントに広がっている。
ロムニー氏は共和党内に根強く残る亀裂を修復しなければならず、自身に懐疑的な見方を投げかける保守派の党活動家たちを焚き付けなくてはならない。過去4年間で活動に磨きがかけられたオバマ陣営との資金力の差も埋めなくてはならない。ロイターのロムニー氏を見る眼には厳しいものがある。
<[ワシントン 4日 ロイター] 米大統領選の共和党候補者指名争いは、3日行われた3つの予備選で、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事がすべて勝利。共和党の本命候補として抜け出した格好となり、オバマ大統領と戦う11月の本選に向け火ぶたが切って落とされた。
中西部ウィスコンシン州と東部メリーランド州、首都ワシントンDCでの予備選を制したことで、アナリストの間では、共和党候補者指名争いはロムニー氏の独走態勢に入り、2番手につけるサントラム元上院議員に実質的に引導を渡したとの見方が出ている。ロムニー氏はこれから、選挙活動の移動に大統領専用機エアフォース・ワンを使うことができ豊富な資金力を誇る現職オバマ大統領との厳しい戦いを迎える。
2人の論戦はすでに始まっている。
オバマ大統領は3日、共和党の予算案に言及する中で、ロムニー氏も同案を支持していると名指しで批判。一方のロムニー氏は、3日のウィスコンシン州予備選での勝利宣言で、サントラム氏など対立候補には一切言及せず、攻撃の矛先をオバマ大統領に集中させた。
ロムニー氏はミルウォーキーで支持者に向け「オバマの政府中心社会では、経済の役割が小さくなるため、政府の役割は大きくならなざるを得ない」と現政権を批判した。
オバマ大統領の再選阻止に照準を移すロムニー氏の前には、やるべき仕事のリストが山積みになっている。
共和党内に根強く残る亀裂を修復しなければならず、自身に懐疑的な見方を投げかける保守派の党活動家たちを焚き付けなくてはならない。過去4年間で活動に磨きがかけられたオバマ陣営との資金力の差も埋めなくてはならない。
また、女性有権者のほか、異例の長期戦になった共和党の候補者指名争いにうんざりしている無党派層からの支持を集めることもロムニー氏の課題だ。
ロムニー氏はこれまで、自身が得意とする経済問題ではなく、妊娠中絶や避妊問題など世論を2分する社会問題の議論にたびたび引きずり込まれてきた。そこは、中絶や同性婚に強く反対するサントラム氏の土俵だ。
南メソジスト大学の政治学教授、カル・ジルソン氏は「ロムニー氏が女性や無党派層の支持を失ったのは、明らかにサントラム氏の失敗だ」と指摘。「彼はロムニー氏を社会問題に引きずり出したが、そこではロムニー氏は不安気で説得力がなかった」と述べた。
最近の世論調査でも、ロムニー氏には課題山積であることが示されている。
USAトゥデー紙とギャラップが2日発表した世論調査の結果では、オバマ大統領が支持率でロムニー氏を4ポイント上回り、1月に同世論調査が始まってから最大の差がついた。無党派層では、この差は8ポイントに広がっている。
<本選の幕開け>
ロムニー氏はすでに、指名獲得に必要な代議員数1144人の半分以上を獲得した。1144人全員分を確保するのは6月までもつれ込む可能性があるが、専門家は共和党予備選は事実上終わり、オバマ大統領との1対1の対決がすでに始まったとみている。
共和党予備選でロムニー氏と争うギングリッチ元下院議長の側近だったリッチ・ガレン氏も「幕は切って落とされた」とし、本選に向けて全勢力の結集を呼び掛けた。
オバマ陣営も受けて立つ構えを見せている。オバマ大統領が共和党の予算案でロムニー氏を名指し攻撃した3日、陣営はロムニー氏を批判するテレビCMも開始した。
オバマ大統領が共和党予算案に向けた批判は、ロムニー氏が不安定な足場に置かれていることをよく物語っている。
ロムニー陣営はウィスコンシン州で、同予算案をまとめたポール・ライアン下院予算委員長と大々的な選挙活動を展開。小さな政府を求め、ロムニー氏に懐疑的な目を向ける保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」からポイントを稼ぐ狙いがあったとみられる。しかし、ライアン下院予算委員長への賛同は同時に、穏健派から嫌気される可能性もある。
民主党はライアン予算案について、共和党がメディケアなど社会保障プログラムを骨抜きにする動きの「証拠として採用」することを計画している。ロムニー氏とライアン氏の共同戦線は今後、民主党の中傷キャンペーンで攻撃対象として再浮上する可能性がある。
ロムニー陣営にとって、オバマ陣営と渡り合えるだけの資金を集めるのは問題ないだろう。ロムニー氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)は、2月末時点で4320万ドル(約35億5000万円)を集めている。一方、オバマ大統領を支持するスーパーPACの資金は630万ドルに過ぎない。ただ、オバマ陣営の総合的な資金力は2月末時点で3億2200万ドルに上っている。
ロムニー氏は、連邦政府の莫大なリソースを使うこともできない。オバマ大統領は命令1つで、勝敗の鍵を握る州の洪水対策に連邦職員を送り込むことも、地球の反対側でアルカイダ掃討作戦を遂行することもできる。
一方で、オバマ大統領とは違ってロムニー氏には、ガソリン価格高騰や米経済失速の責任を負う必要はない。本選が近づくにつれ、どんなイベントも形勢を逆転させる可能性が出てくる。
メーン大学の政治学教授、マーク・ブリューワー氏は「米国政治の4月から11月は非常に長い時間だ」と語った。(ロイター)>
杜父魚文庫
9406 米共和党本命候補として抜け出したロムニー氏だが 古沢襄

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