9422 心臓手術関連記事を週刊誌が掲載 石岡荘十

今月9日(月)発売の週刊現代が、心臓手術関連の記事を掲載している。3ページの記事のタイトルは「その病院で 『心臓手術』すると 死にます」。
いかにも週刊誌らしい刺激的な見出しだが、発売前に送られてきた記事見本によると、体裁は筆者からの聞き取りということになっているが、その大部分は、筆者が本メルマガ始め、あちこちで書いた記事の引用である。
実は、日本の心臓手術体制の問題については、ここ数年「これは放っておけない」と取材を始めていたテーマで、医療関係者を会員に持つメールマガジン「MRIC」(東京大学医科学研究所准教授が主宰)を中心にときどき断片的に寄稿すると共に、本メルマガでも時折、リポートした。
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/2560269/
1/6「病院の手術実績を隠す学会」(上)
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/2561190/
1/7「病院の手術実績を隠す学会」(下)
 
これら、一連の記事に目をつけて筆者に接触をしてきたのが、週刊現代だったというわけだ。
従って、筆者の原稿を裏づけする医師としては、上記メルマガでも談話を使い、天皇陛下の心臓手術に関連してマスコミの間でコメンテイターとして引っ張りだこだった南淵明宏医師(東京ハートセンター長)が、ここにも登場し、「実態はもっと酷い」という趣旨のコメントを展開している。
世間には「たかが週刊誌」という見方があるのは確かだが、南淵医師は2006年、「異端のメス」というタイトルで週刊現代に1年間にわたって毎週、心臓手術業界についての内幕を書いた実績があり、同誌は医療問題について大手マスコミとは異なった視点で改革への提言をつづけている。筆者も会員制月刊誌「テーミス」(2007年2月号)で同医師を取り上げたことがある。
ただ、日本胸部外科学会が手術実績のデータ公開に当たって、病院の実名を隠し続けている。このことが結果的に患者を危険にさらしている、患者が死んでいるかもしれない現状について週刊現代は、ヒポクラテス(B.C.460-370)の「患者の健康と生命を第一とする」という「医の倫理」を、日本胸部外科学会に問うていない。
さらに、心疾患は日本人の死亡原因の第2位であるが、この中に未熟な心臓外科医の手術の犠牲になった患者はいないのか。儲かるから、心臓外科病院が増え続けている現状を国は事実上、放置している。そのことを、もっと厳しく責めるべきではなかったか。この2点で、書き足りない。
心臓手術業界の利益や秩序を守るために、患者の犠牲には目をつぶる。学会と国のこの不作為で、今日も心臓患者が犠牲になっているかもしれない。この点を見過ごした記事は、画竜点睛を欠く。
それにしても、理解できないのは、この問題に対する大手マスコミの無関心振りである。「たかが週刊誌」「たかがメールマガジン」と侮ること勿れ。メディアが多様化するなかで、画一的な記事しか書かない“大手マスコミ”に、本誌を含めたミニコミが一石を投じることになれば、書いた甲斐があるというものである。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました