毎日新聞の民主党「花見の宴」が面白い。「100回の議論より1回の食事の方が結束が強まることもある」と信じる輿石幹事長が党内の閣僚経験者に呼びかけて、東京タワー近くにある日本料理店の咲き誇る満開の夜桜を一望できる座敷で花見の宴。
狙いは造反を明言している小沢一郎元代表を和やかな宴会に引き出し、懐柔しようという作戦だった。小沢氏のほか鳩山元総理大臣や菅前総理大臣など三十九人の閣僚経験者が出席して和やかな宴会になったという。
だが、そこは海千山千の政界キツネとタヌキの花見の宴。小沢氏も上機嫌を装って杯を重ねたが、果たして腹の内はどうだったろうか。民主党もすっかり自民党的になってきた。
<民主党閣僚経験者らが集う「花見の会」が10日夜、都内で開かれた。39人が出席したが、会を主催した輿石東幹事長の狙いはただ一人。消費税増税関連法案への造反を明言している小沢一郎元代表を和やかな宴会に引き出し、懐柔しようという作戦だ。だが、小沢氏は法案の党議拘束を否定しており、「春の宴」だけでは雪解けは実現しそうにない。(酒井充)
東京・芝公園の東京タワー近くにある日本料理店。咲き誇る満開の夜桜を一望できる座敷で、宴会は大いに盛り上がった。
もちろん小沢氏も上機嫌に杯を重ねた。隣合わせた石井一参院予算委員長に「今最も必要なことは一致結束することだ」と呼びかけられると「分かった!ともにやろう」と応じた。
「仇敵」の仙谷由人元官房長官も小沢氏の元に駆け寄った。ともに大病を患った経験を持つ2人。「お互い体に気をつけよう」と健康談義に花を咲かせた。
宴会は輿石氏の思い描いた通りの和気あいあいとしたムードに包まれた。党員資格停止中の小沢氏を党の公式な会合に招くのは難しい。そこで輿石氏が考え出した苦肉の策が、自民党政権時代も含む閣僚経験者の非公式会合だったのだ。
だが、華やかな宴席の途中、小沢氏は石井氏にこんなことも漏らしていた。
「政治生活の最後を終わるためにも、この国の国民に自分の政治家としての意思を発信する。あんた力を貸してくれ」
野田佳彦首相が増税に「命を懸ける」のなら、自分は「政治生命を懸けて」それを阻止するという闘争宣言だ。
すでに前哨戦は始まっている。対立点は今回の法案が党議拘束の対象となるか否か。首相が4日の参院予算委員会で「党議拘束はかかる」と明言すると、小沢氏は9日のCS番組で「党議拘束うんぬんはおかしい」とすかさず反論。10日も、小沢氏に近い一川保夫参院幹事長が「今の段階で(党議拘束は)決めたものはない」と述べたのに対し、法案の党内審査の責任者だった前原誠司政調会長は「(党議拘束は)かかっている」と強調した。
党の決定に所属議員が従わない現象は、民主党では珍しいことではない。党の意思決定のあり方が不透明だからだ。鳩山政権が廃止した政策調査会は、菅政権になって復活。党執行部が都合良く政策の決定過程を変えるあいまいさが「党の決定ではない」と反論される余地を生んでいる。
「衆参ねじれ国会の中でも、しっかり起きあがって頑張っていこう」
輿石氏は花見の会のあいさつでこう述べ、国会内の土産店で販売されているお菓子「ねじれ起こし」を手に結束を呼び掛けた。
周囲に「100回の議論より1回の食事の方が結束が強まることもある」と語り、小道具まで用意して党内融和を演出しようとした輿石氏。しかし、衆参両院のねじれよりも深刻なのは、どうしても解けそうにない党内のねじれだと自覚したかもしれない。(毎日)>
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