9482 日本が警戒すべきはノドン・ミサイル  古沢襄

暖かくなって体調が良くなってきた。骨髄腫の告知を受けて十年目、余命三年といわれたのが、まだ生きている。冬になると身体のあちこちに痛みが走る。骨髄腫の影響で身体中の骨がスカスカになっていると感じながら、じっと苦痛に耐えている。血圧も150を超す。
それが春から夏にかけて嘘のように痛みが消えて、血圧も120に下がる。血液のガンというが制がん剤もまだ服用していない。こんな一年のサイクルを繰り返して十年目を迎えている。どこまで続く”ぬかるみぞ!”と思うことがあるのだが、ご本人は至って気楽な毎日。達観するしか手がないからである。
それにしても日本もそうだが、世界の動きが慌ただしい。動乱の季節に入ったという思いに駆られる。
病人のところに電話やメールがよく来る。
北朝鮮のミサイル発射で官邸の初動が遅れたのは、ミサイルを米イージス艦が撃ち落としたという情報があったからだ、と官邸筋に近いところから珍説がもたらされた。北ミサイルを撃ち落としていれば、今頃、朝鮮戦争が勃発していただろう。
「そりゃーないよ」と即座に否定したが、よくよく考えれば将来あり得ない話ではない。ロシアのインタファクス通信は、北ミサイルは旧ソ連の古い一段式弾道ミサイル「スカッドB」の技術をコピーしたものと暴露している。
北朝鮮のミサイル開発は1991年5月、韓国に亡命した外交官の高英煥(コヨンファン)の証言がある。コヨンファンの長兄がソ連に留学して、地対地ミサイル、艦対艦ミサイルのエンジン研究をしていたという。
この証言によれば、北朝鮮は1990年、シリアにスカッド・ミサイルC型を売却するまでのミサイル技術を持つようになっている。
1993年8月11日に北朝鮮軍583部隊の林永宣(イムヨンソン)中尉が韓国に亡命した。その証言は「北朝鮮は火星一号が完成した。このミサイルは日本攻撃が可能な飛距離を持っている」。このミサイルがノドン・ミサイルといわれるものである。
この二ヶ月ほど前の5月29日に火星一号の試射が行われ、日本海の能登半島沖に着弾している。試射は事前に米国と韓国には通報され、日本政府は米韓両国から知らされている。ただし発射された三発のミサイルは二発が100キロ、一発だけが550キロほど飛んで能登半島沖350キロの海面に着弾。ミサイルには液体燃料が使われている。
防衛庁は航空自衛隊のレーダでミサイル航跡を追尾して、大気圏外から大気圏に突入するときの速度はマッハ8・5,一〇分で1000キロ飛ぶ能力があると判定した。(1993年11月11日 衆院安全保障委員会)
これとは別に米情報筋は北朝鮮が射程2000キロの大砲一号を開発しているという情報をキャッチした。大砲一号はテポドン・ミサイルのことで、米国はこのミサイル技術が中国のミサイルCSS・2の技術が北朝鮮に流れた疑いを持った。
今回、西側メデイアに公開された「銀河3号」ロケットは外観上、ノドン・ミサイルを四基搭載しているとみられることから、ロシアのインタファクス通信が暴露したように、旧ソ連の古い一段式弾道ミサイル「スカッドB」の技術をコピーし、改良したものとみた方がいいのかもしれない。
中国が北朝鮮のミサイル技術に積極的関与をしていたならば、発射後一、二分で空中爆発という事態は避けられていた筈である。事実は旧ソ連の「スカッドB」の技術を、北朝鮮が独力で改良してきたとみる方が妥当のような気がする。ということは米本土に着弾するテポドンの開発はまだ道通しということになる。
日本にとって警戒すべきはノドン・ミサイルの性能である。ノドンの試射を北朝鮮は繰り返しているが、その性能は定かではない。射程を1500~1600キロまで延ばしたとみられるが、これだと東京が射程の範囲になる。朝鮮半島有事の場合は、日本も巻き込まれることを覚悟して、ミサイル防衛システムを確実にしておく必要がある。
杜父魚文庫

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