9490 書評『女性宰相待望論』(自由社)  宮崎正弘

メルケルもサッチャーも、そしてガンジーもペロンも。次に女性宰相が生まれるのは米国、韓国より日本が先になる可能性がある。
正式な題名はチト長い。『時代が登場をうながす女性宰相待望論』となっている。
女性は本能で対応できるから、危機には強い。「空っぽな総理」より、女性政治家にダイナミズムがあるのしがらみが少ないからでもあろう、とするのが編者の立場。
しかも本書はタイミングをはかると絶妙な刊行時期である。
ユーロ危機に陥った欧州をたくましく牽引するドイツの首相はメルケル女史。決然としてユーロには加盟せず経済主権と独立を守ったのは英国の女性宰相サッチャー。おりから名優メリル・ストリープ主演で映画になって長蛇の列。ちなみに映画を一年に一本ていどしか見ない評者(宮崎)も映画館へ足を運んだ。
そして一月には台湾で女性宰相が誕生寸前というところまで善戦した。タイには美人の宰相がうまれ、年末の韓国大統領選では、たぶん間違いなく史上初の女性大統領=朴権恵が登場するだろう。
すでにアジアではバングラデシュ、スリランカ、インド、タイで女性宰相、もしくは元首の出現をみており、アフリカや南米諸国でもつぎつぎと誕生しているではないか。
この文脈に立脚して、時事通信社の解説委員長である加藤清?氏が次の九人の女性政治家と対談した。
小池百合子、ありむら治子、丸川珠代、高市早苗、稲田朋美、亀井亜紀子、山谷えり子、佐藤ゆかり、三原じゅん子(敬称略、順不同)。
この人選が順当かどうか、あるいは小渕優子、野田聖子、片山さつきの名前がないではないかと不満な読者もいるかも知れない。田中真紀子の名前がないのは当然であろうが・・・。
しかし推薦文に安部晋三元総理が言う。「我が国初の女性宰相は必ずこの九人のなかから出る」と。インタビューアーの加藤さんは最後のこう言う。
「サッチャー首相の発言で『言って欲しいことがあれば、男に頼みなさい。やって欲しいことがあれば、女に頼みなさい』という有名な言葉がある。(中略)九人の議員はいずれもエレガンスでかつ大変な勉強家、その上、筋をきちんと通す」
「本書を単なる時流に乗った女性論ではなく、将来を見据えた女性論の一つと理解」するならば、同時に九人の女性政治家との対話から、明日の日本の政治刷新のビジョンが提示されている。
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