9508 英中文化交流より、ニール殺人事件に質問が集中?  宮崎正弘

李長春が訪英、ロンドン首相官邸でキャメロンと会見し「釈明」?英国は「本当はどこで死んだのか」など質問を用意している。
「英国人ビジネスマンのニール・ヘイウッドは2011年11月14日に(重慶市内のホテルで)、死亡し、四日後に葬儀は済まされた。検死もなく、火葬され、遺族には遺灰しか返されなかった。英国民の反中国感情が激化した。
「しかも事件の翌日に英国外相は経済団体をつれて重慶を訪問していた。そのうえ、英外務政務官(副外相に相当)は(謀殺事件の主役となる)薄き来(当時、重慶市書記)とも会った。なにひとつ、英国人が変死したことに言及はなく、英国外相は質問もしなかった」(テレグラフ、4月17日)。「これは英国外交の失態である」として野党は鋭く国会で追及の構え。
英国ブックフェアを訪問中の劉延東(政治局員)は月曜に外相と会談したが、捜査の進展状況に関しての説明がなかった。劉は団派を代表する女性政治家。
中国の政治局常務委員(序列5位)の李長春も現在、英国を訪問中で、今夕(17日)ロンドンの首相官邸にキャメロン首相を訪ね、意見交換をする。
李長春は大連生まれ、瀋陽市長から河南省書記、広東省書記を経て、江沢民に食い込み異例の出世をとげた。
反日強硬派としても知られるが法輪功弾圧で江沢民の覚えめでたく首相候補にも推されたが、朱容基首相(当時)が反対し、途中から首相レースを脱落し、賈慶林にも抜かれ第五位の常務委員となった。悪役として批判の対象となりやすいのもグーグル撤退の主謀者でもあり、中央宣伝部を統括するからだ。
英紙『テレグラフ』紙(4月17日付け、電子版)は「本来の目的である文化交流より、ニール殺人事件に質問が集中するだろう」と予測し、また『インデペンダント』紙(同日付け)は、「英国外務省は早くから事件を知っていた。しかし中英関係を配慮し、公表を控えてきたため、正式に中国への『調査』依頼は、二月の王立軍亡命未遂事件以後になったのだ」と批判した。
また『ザ・タイムズ』紙(同日付け)は「ニール・ヘイウッドは本当にホテルで死んだのか、あるいは殺された場所もホテルではないのではないか」と疑問を並べている。
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(読者の声)中国の店で店員が釣銭を投げてよこすのは、チーンという音を聞かせてその貨幣が本物なことを示すためなんだと、昔の中国を知っていた先生から聞いたことがありますーー真偽はともあれ。
中国人民が交通事故や水難被害者に冷淡なケースが報じられ、外国人ばかりか中国人自身すら驚いているようです。
しかしこれは伝統的なもので、「数世紀の習慣、国の法律」に由来する根拠はあるのです。「死にかけている者を家に入れたり食物を与えたり世話をする者は、これによって彼のために責任を負う、というのが法の定めである。」
「この法律は疑いもなく、かつては殺人予防に十分有効であった古い習慣の結晶である。」(『奉天三十年』)そして考えてみれば、そのような習慣が、殺人予防に有効だった社会とはなにか。
裸の個人が浮遊している社会、居住の共同体も信仰の共同体も、あらゆる中間組織がない(弱い)社会にほかならず、それは秦の始皇帝が大きすぎる帝国を作ったのが、根本の原因だったかもしれません。
しかし反面それだけに、「支那商人と深く接触した者は、彼らが世界の如何なる国の商人に比しても劣らず信頼すべき者であることを見るのである。」(同)。というように顔見知り間の利害同盟の倫理を発達させるのでしょう、善に悪にも。(石川県、三猫匹)
(宮崎正弘のコメント)クリステー、矢内原忠雄訳、岩波文庫ですね。「奉天三十年」は。
中国とて安徽省商人、山西省商人などは富山の薬屋さんよろしく全土を行商して信頼を築いたので、上海人のようなビジネスの遣り方はしません。儲かると聞くと集中豪雨のように競合するのは広東商人と福建商人に多いですね。
杜父魚文庫

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