北朝鮮のミサイル発射がオバマ政権に意外な打撃を与えたというレポートの続きです。オバマ大統領にとって外交面での打撃はいよいよ本格化する選挙戦を迎えて、憂鬱な材料となりそうです。日本ビジネスプレスから、原文へのリンクは以下です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35014
<<大統領選でオバマ攻撃の格好の材料に>>
こうした批判は共和党側から出ている点で党派性も強いとはいえ、オバマ政権がこの2月29日に北朝鮮との合意を発表し、その外交成果を誇っていた ことは事実である。その合意は、北朝鮮の核兵器開発やミサイル発射の当面の停止に対し、米国が24万トンの食糧を北に与えるという趣旨だった。
だが、そのほんの2週間ほど後に、北朝鮮は「人工衛星打ち上げ」と称する弾道ミサイル発射計画を発表し、この合意を事実上、踏みにじったのだった。
オバマ政権は北朝鮮に対し、その発射を止めるよう様々な形で訴え続けた。威圧的な言明、懐柔的な声明を再三、出した。だが金正恩氏を新トップに抱く北朝鮮は平然として発射を断行したのだった。
発射実験自体は失敗であっても、オバマ政権は二重に屈辱を受けたこととなる。
これまでのソフトな北朝鮮政策が破綻したことは、共和党側の指摘を見なくても明白だと言える。米国のメディアでも「北朝鮮のミサイル発射はオバマ大統領の外交政策への大打撃」(米議会専門紙「ザ・ヒル」の論評)という受け止め方が多い。
オバマ大統領にとってさらに懸念の対象となるのは、今回の事態が、これから本格的となる大統領選挙キャンペーンにおいて共和党側の攻撃材料となる見通しである。ロムニー候補の前述の言明はすでにその始まりだと言えよう。
今の大統領選では、焦点がまだ共和党側の指名獲得の戦いに絞られてきたためか、外交政策を巡る論戦は活発ではなかった。ただしオバマ大統領側は、 いざ外交がテーマとなれば、アルカーイダの首魁ビンラーディンの抹殺やイラク軍事介入の終結、アフガニスタンへの介入の縮小などを外交政策の成果として打 ち出す構えを見せてきた。外交全般でも大きな失態はないという構えだと言えた。
ところがそのオバマ外交はここにきて北朝鮮政策の破綻という大きな「負」を指摘される局面となったのである。今後の大統領選キャンペーンで、共和 党側が北朝鮮のミサイル発射にスポットライトを当てて、オバマ政権の外交手法を非難していく見通しは確実と見られる。だから今回の事態でオバマ大統領は傷 ついたと言えるのだ。
事実、北朝鮮は今回の発射失敗にもかかわらず、長距離ミサイルや核兵器の開発を強行するという姿勢は変えていない。北の核武装の究極の目的である長距離弾道ミサイルへの小型化、軽量化した核弾頭の装着はなお追求されているのである。
オバマ大統領にとって憂鬱な春が続きそうだ。(終わり)
杜父魚文庫
9524 オバマ大統領の憂鬱な春 古森義久

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