<[東京 20日 ロイター] 参議院は20日の本会議で、前田武志国土交通相と田中直紀防衛相に対する問責決議案を自民、公明など野党の賛成多数で可決した。
野田佳彦首相はじめ政府・民主党は両大臣を続投させる考えだが、自民党は辞任しない場合、すべての国会審議に応じないと、強気の姿勢を見せている。ただ、公明党は両大臣がかかわらない国会審議には応じる考えで、野党間の足並みはそろっていない。
藤村修官房長官は午後の会見で「問責の可決は事実として受け止めるが、総理の方針は明確であり、2閣僚にはしっかりと職責を果たしていただきたいということだ」と語った。
民主党の輿石東幹事長も参議院本会議での問責決議の後、「可決されたということは残念だが、これを機会に参院のあり方、問責決議とはいったいどういうものかということが問い直されてくると思っている」と述べるとともに、両大臣交代の必要性は「毛頭ない」と否定した。
また、仮に自民党が審議拒否を続けた場合でも他の野党とともに審議を粛々と続ける考えかと聞かれ、「それは昨日の政府・民主三役会議でも確認している。その方針は何ら変わらないし、変えない」と答えた。
これに対し自民党はすべての国会審議に応じない構えを示している。20日の参議院本会議でも、2閣僚の問責決議後の審議には応じず、党所属議員が本会議場を退席した。
一方、公明党の井上義久幹事長は問責決議の後、記者団に対し「まずは問責可決された両大臣自ら辞めるべきだ」との考えを示しつつも、今後の国会審議について「必要な審議は国会の中でその是非を明らかにしていくというのが基本姿勢だ。一体改革も特別委員会設置についてはわれわれも賛成しているわけで、正式な提案があれば具体的に考えていく」と早期の審議入りに前向きな考えを示している。
社会保障と税の一体改革関連11法案を一括審議する特別委員会の設置については、今週の与野党国対委員長会談で大筋で合意している。民主党は24日にも衆議院本会議で特別委員会設置を議決する考えを示しているが、自民党が審議に応じる姿勢を示さないなかで、早期の審議入りは難しい情勢となっている。(ロイター)>
最初にロイターの記事を掲げる。外国通信社だから仕方ないといえるが、平板な情報の羅列で物足りない。昨夜も野田首相を支える筋から情報を得たが、裏舞台ではまったく違う動きがある。足並みの乱れは、野党よりも先に与党から先に現れた。
野田政権の権力構造は三つの筋があるとみて良いだろう。絵解きをすると①藤井裕久氏を中心とする消費増税派②仙谷由人氏を中心とする原発再稼働派③輿石東幹事長を中心とする党執行部・・・この三つのグループは対立しているわけではないが、当面の最大政策課題となった消費増税法案の処理で濃淡が顕在化しているのに注目する必要がある。
表面の動きだけをみれば、前田武志国土交通相と田中直紀防衛相に対する問責決議可決を受けて、輿石幹事長が記者会見で述べた「(二閣僚の)辞任の必要は毛頭ない」が野田政権の不動の方針とみえる。
自民党の審議拒否戦術に対するメデイアの批判の高まり、いずれは審議に応じてくるという”我慢くらべ”の戦術といえる。公明党が二閣僚が出席しない委員会審議には応じるので、野党の足並みが乱れることに期待している。
これでいくと24日にも衆議院本会議で特別委員会設置を議決し、月内に消費増税法案の審議に入るというスケジュールが危うくなる。自民党が24日の衆議院本会議をボイコットするからである。自民党抜きで本会議の議決を強行しても、委員会審議はストップしてしまう。
消費増税法案の成立に政治生命を賭けた野田首相を、実質的に支えているのは藤井裕久氏を頂点とする財務省グループ。最優先課題は消費増税法案である。輿石幹事長が突っ張れば、審議日程が大幅に遅れることを懸念している。
「二閣僚問責というトゲを早く抜く必要がある」というのが藤井氏の本音となっている。トゲを抜いて、同じ財務省グループである自民党の谷垣総裁に渡りをつけ、月内に消費増税法案の委員会審議に入るつもりでいる。輿石幹事長が硬直した突っ張り戦術にこだわると、消費増税法案が本当に危うくなる。野田首相もそれを望んでいない。
この間にあって仙谷由人氏は火中の栗を拾うつもりはない。原発再稼働に智恵を絞る毎日となった。ついでながら前原誠司政調会長も表面に出なくなった。すでにポスト野田に思いを馳せているのかもしれない。
このような情勢下で26日の小沢裁判が判決日を迎える。ロイターがいうような平板な政局ではないことが確かといえる。民主党の統一と団結を優先課題とする輿石幹事長と消費増税法案の成立に執念を燃やす藤井裕久氏の力較べが、これから幕を開ける。
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