今朝の読売新聞に、福島第一原発に関する政府の事故調が今月上旬、菅直人前首相を非公開でヒアリングしていたとの記事が載っていました。「菅氏 国会答弁と食い違い 事故調に証言『海水で再臨界ありえぬ』」という見出しで、1号機の原子炉冷却のため海水注入を行おうとなった際の菅氏の「供述」に食い違いがあると報じています。
記事によると、菅氏はこれまで国会などで「海水注入にあたって再臨界の危険性を考えた」と答弁していたのに、事故調のヒアリングにはこう偉そうに答えたということです。
「海水で再臨界するわけがない。私にはそれくらいの知識はある」
……これは真っ赤な嘘か、あるいは菅氏のキャパが小さく自分勝手な脳みそが記憶を改変しているか、どちらかですね。実際には現地の吉田所長が官邸サイドの意向をくんだ東電本店の指示に逆らって海水注入を続行したわけですが、菅氏の言う通りにしていたら事故被害はさらに拡大していた可能性があると指摘されています。菅氏はこの「事実」を否定しようと躍起なのでしょう。
政治家も官僚も嘘をつくものですが、菅氏の場合は嘘のレベルが低すぎて、しかもそれに対する反省が全くないこともあり、ホントにどうしようもありません。最近、こんな人の「証言」とやらをありがたがってさも真実のように書いている原発事故検証本がいくつも出ていますが、どういうつもりなのか。
参考までに、この海水注入の件に関する私の(当時、実際にその場面を目撃した関係者から聞いた)取材メモの関連部分を公開します。
《国会などでは菅氏が「再臨界の懸念があるんじゃないか」と尋ねて班目氏が「ゼロではない」と答えたことになっているが、実際はそんなもんじゃなかった。3時に水素爆発が起き、東電の武黒さんだったか誰かが「追加的状況を抑えるためには海水注入しかない」と話をした。それに対し、菅氏が「安全委員会の考えはどうか」と振って、班目氏が「基本的にはそれしか方法がない」と答えた。次に「保安院はどうか」という話がきて、保安院側も「やはりそれしかない」と答えていた。
すると、しばらく沈黙があった後、菅氏がいきなり「海水を入れると再臨界になるという話があるじゃないか!」と自分で言い出した。たぶん、入れ知恵をした人が菅氏が重用したセカンドオピニオングループにいたのだろう。そこで、久木田原子力安全委員長代理が「再臨界は、条件が整わないと起きない。塩分が臨界を防ぐ効果も出てくるし、抑制効果も出てくるので心配しなくても…」と説明した。
ところが、しばらくして、菅氏が怒鳴り始めた。「君らは、水素爆発はないと言っていたじゃないか!それなのに今回は再臨界はないなんて言えるのか、(可能性は)ゼロって言えるのか?」と。そこで班目氏が仕方なく「ゼロとは言えない」と答えたというのが事実関係だ。そして、これを受けて菅氏は「そのへんの整理をもう一度しろ」と指示した。これで海水再注入の指示が1時間半遅れたのは事実だ。
このとき菅氏の指示を受けて、東電からだけでなく、官邸からも福島の現場に「首相の了解を得るまで作業は止めろ」という指示があった。細野豪志氏もその場で現地の吉田所長に電話してそう言っていた。それなのに細野氏は今ではそれを忘れている。海水注入は結果として止まらなかったが、止めろと官邸が指示したのは事実であり、公表していないが東電にはその記録が残っているはずだ。政権が代わったら出てくるのではないか。》
杜父魚文庫
9540 菅前首相は政府の事故調に嘘を述べている模様 阿比留瑠比
阿比留瑠比
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