海の向こうの国の話だと見逃す事は出来ない。ユーロ圏でも経済が繁栄かつ安定しているオランダで、財政再建めぐる意見対立でルッテ首相の連立政権が崩壊し、早ければ6月にも総選挙が実施される可能性が出てきたと英ロイターが報じた。
EUの優等生・オランダの政情不安は、ドイツのメルケル首相らが中心となって進めている新EU財政協定の年内批准にも影響を及ぼしかねない。さらにオランダも財政赤字削減を実施できなければ、フランスと同様に、「トリプルA」格付けを引き下げられる可能性も出てきた。
フランスでEU財政協定の再交渉を公約に掲げている野党のオランド候補が大統領選で優位に立った。EUで「ユーロ懐疑派の新政権」が続々と誕生する可能性があり得る。国民は厳しい財政再建路線を嫌って、生活が第一の野党路線に傾く引き金をオランダがひくことになりかねない。
これがEU経済ひいては世界経済に影響を与えるから、日本にとっては対岸の火事と見過ごすことは底抜けの楽観以外の何ものでもない。
<[ハーグ 23日 ロイター] オランダのルッテ首相は23日、財政再建策をめぐる与野党の意見対立を背景に、ベアトリックス女王に内閣総辞職を申し出た。これを受け、早ければ6月にも総選挙が実施される可能性が出てきた。
オランダでは2010年10月以降、中道右派の自由民主党を率いるルッテ首相がキリスト教民主勢力(CDA)と組み、極右の自由党が閣外協力して連立政権を運営してきたが、自由党が財政赤字削減策の受け入れを拒否したことで、協議が決裂。連立政権の崩壊につながった。
ドイツとともに欧州連合(EU)の新財政協定を強く支持し、ギリシャにも財政再建努力を迫っていたオランダだったが、内閣総辞職により、政治的空白に直面する事態となった。
財政再建目標を緩和して以降、国債利回りの急上昇に直面しているスペインの二の舞にオランダが陥ることはないとアナリストはみているが、それもオランダ与野党が何とか歳出削減策をめぐり合意できる場合に限ると指摘しており、合意が得られなければ、オランダは「トリプルA」格付けを失う可能性がある。
ユーロ圏でも経済が繁栄かつ安定しているオランダの政局混乱を市場は嫌気し、オランダおよび域内周辺国の国債利回りは上昇。10年物オランダ国債NL10YT=TWEBの対独連邦債利回り格差は3年ぶり高水準に拡大した。
EU財政協定の再交渉を公約に掲げているフランス最大野党・社会党のオランド候補が大統領選で優位に立っていることに加え、財政赤字削減策をめぐるオランダの連立政権崩壊でさらに地合いが悪化した格好。
ルッテ首相によると、女王は辞職届けを検討するとし、国のために引き続き取り組むよう求めた。だが政府関係者は、事態打開には総選挙が不可避との考えを示している。
オランダのデヤーヘル財務相はロイターに対し「オランダは引き続き健全な財政政策を維持するとともに、財政赤字を圧縮し持続可能な財政軌道を維持すると市場に示す」とし、国内総生産(GDP)比で財政赤字を3%に引き下げるという来年の目標は依然として達成可能との考えを示した。
また「オランダと南欧諸国の間に相関関係はない。オランダ債務は(GDP比)65%程度で、ユーロ圏の平均を下回っている」と主張し、市場の不安沈静化に努めた。
<財政協定批准への脅威>
オランダは4月30日までに、欧州委に対し、EU財政協定に定められた財政再建目標をどのように達成するのか、計画の具体策を提出するよう求められている。
オランダの政局混乱は、メルケル独首相らが中心となって進めている新EU財政協定の年内批准完了を阻害する可能性がある。
野村のアリスター・ニュートン氏は「オランダの財政再建協議決裂は、メルケル首相がユーロ圏危機対策の柱に据える財政協定の批准実現に対し、著しい脅威となる」と指摘。「少なくとも財政協定の信頼性を大きく損ないかねず、最悪の場合、他の欧州諸国が(オランダの)後に続く可能性がある」と述べた。
オランダのクナーペン外務副大臣は同日、予算編成をめぐる交渉が不調に終わったことを受け、総選挙が「避けられない」との見通しを示した。
ルッテ首相の自由民主党報道官は「有権者に早期の決断を求め、新政権を樹立することが国益にかなう」とし、総選挙の実施日について6月27日が可能性の1つとの見方を示した。
ルッテ政権樹立には4カ月程度を要したが、野村のニュートン氏は次の新政権発足に向けた連立協議はそれ以上の時間を要する可能性があると指摘。また「ユーロ懐疑派の新政権」誕生もあり得ると述べた。
こうした中、欧州委員会のバローゾ委員長はロイターに対し「オランダ当局は、同国の金融安定および市民の幸福を確実にするため、何らかの解決策を見い出すと確信している」と述べ、オランダは財政再建目標を達成すべきとの考えを明確にした。
<格下げのリスク>
ルッテ首相は、野党となんとか予算協議で合意に達し、4月30日の期限まで欧州委に予算案を提出するよう取り組む可能性がある。
ラボバンクのエコノミスト、ハンス・ステグマン氏は、オランダ政府が期限までに予算案を提出するとの見方を示す一方、欧州委に求められている対GDP比率3%への財政赤字圧縮に向け、デヤーヘル財務相が野党の合意を取り付けられる公算は小さいと述べた。「野党の多くは赤字圧縮が重要だとは考えていない」という。
仏社会党のオランド大統領候補は、EU財政協定の再交渉を主張しており、オランダの政局混乱は、財政協定への支持が揺らぐ状況の中で起こった。
オランダも財政赤字削減を実施できなければ、フランスと同様に、「トリプルA」格付けを引き下げられる可能性もあり、そうなれば借り入れコストが上昇するとみられている。(ロイター)>
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9560 オランダ連立政権が崩壊、「トリプルA」格付けを引き下げか 古沢襄
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