薄煕来夫妻の「不正蓄財、海外移転が80億ドル」との朝日新聞報道の真偽は?
サウスチャイナ・モーニングポスト紙(4月23日)は、薄煕来ファミリーの汚職調査で、「近く周永康にも捜査の手が伸びるだろう」と伝えた。また香港における不正蓄財の調査はほぼ終わっており、薄ファミリーの利権ネットワークのなかで、香港における株、不動産投資はすくなく見積もっても1億3600万ドル。これらは大連の実業家「大連実徳集団」の徐明が誘導したという。
ところが日本の報道が世界の華字紙に跳ね返っている。
「まだ当局が調査していて公式発表がない段階で、日本の朝日新聞が薄夫妻の不正蓄財、海外移転が80億ドルとしたのは、当局が外国メディアに先にリークしたのか。それにしても巨額過ぎないか?」と報じた。「日媒報薄夫妻海外転移60億美元巨費」(多維)という見出し。
とくに在米華僑が発行する有力紙『多維新聞網』(4月23日)は、「日本で発行部数第二位の朝日新聞は、いかなる筋からの情報かを明示しないで、夫妻の不正蓄財を80億ドルと報道した」と半信半疑のニュアンスを漂わせながら、朝日新聞の当該紙面の写真入りで伝えた。
つまり、これまで言われた薄煕来夫妻の不正蓄財は80億元(ドルではない)。この数字は王立軍が成都の米国領事館へ駆け込んだときにもたらされた情報。夫人の谷開来が、別途英国人フィクサーのニール・ヘイウッドと交渉していたとされる英国への不正移転8億ポンドは含まない。
80億ドルは380億元、当初の80億元とは天文学的にことなる巨費であり、即ち80億元は邦貨1040億円。後者の380億元なら邦貨換算で4940億円になる。後者の数字はちょっと考えにくいのではないか。
▼薄ファミリーの利権ネットワークは世界に広がっていた
薄煕来の兄は薄煕永で光大集団のCEO、世界中でビジネスを展開している。香港での不正蓄財の捜査対象には、この兄も入っている。
薄の前夫人は李丹宇、その間にできた長男は李望知という。後妻の谷開来とのあいだに出来たのは『次男』で世界的に放蕩息子のイメージが行き渡ったが薄瓜瓜である。兄弟はしたがって異母兄弟、十歳の年齢差がある。
李望知は父親の薄煕来とは疎遠である。そして親子関係の疎遠は、別の意味で僥倖であるかも知れない。
さて李望知はコロンビア大学卒業後、「李小白」という変名で、投資ビジネスを展開する(グランドン・リー集団)、一方でシティコープにも役職を得ており、北京と大連を拠点にかなり多岐にわたる商いをしている。
また香港の日本企業「大東開運」と組んで、大連で養牛場も経営しており、大連雪龍黒牛有限公司から『中国で一番美味しい牛肉』を日本に輸出する商売にも絡んでいるという。
李望知は太子党のエリートらで構成する「北京起業家倶楽部」の理事をつとめるが、この特別メンバーには「百度」創設の李彦宏や、不動産投機でしられる黄怒波らがいる。
黄怒波と言えば、かのアイスランドの極寒地にスキーリゾートを建てるなどといって広大な土地を買おうと動いた怪しげな起業家であり、昨年アイスランド政府は、この購入申請を蹴った。
李望知が李小白を名乗るのは、不気味な変名ではないか、と博訊新聞(4月24日)が書いている。「小白とは齋の第十六代君主、桓公の別名。小白が齋を乗っ取るために兄弟を殺し、謀略を用い、いかにして覇者となったかは『春秋』にある」と。
杜父魚文庫
9562 もうどんな報道にも驚かない筈だったけど 宮崎正弘

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