訪米した野田首相はオバマ米大統領と会談後、1日にホワイトハウスで共同記者会見を行った。台頭する中国や北朝鮮を念頭に、アジア・太平洋地域で安全保障と防衛協力の強化を目指す方針を明らかにした。
とくに両首脳は、北朝鮮が核実験を含むさらなる挑発行為をとらないよう、自制を求めていく考えを表明したが、米政府は韓国首脳に対して北朝鮮が早ければ今週中に3回目の核実験を実施するとの判断を伝えている。(韓国・中央日報)
日本に対して今週中という切迫した極秘の情勢判断を伝えたのか、記者会見からは窺うことが出来ない。NHKは両首脳の合同記者会見の内容を次のように伝えている。
▽日米同盟
この中で野田総理大臣は、日米同盟について「オバマ大統領との間で、日米の二国間関係やアジア太平洋情勢などについて大局的観点から意見交換し、日米同盟の今日的な意義や長期にわたる在り方について確認できた。これまで日米関係は日本外交の基軸だと申し上げてきたが、改めてアメリカの友人と話して、日米同盟はゆるぎのないものでなければならないし、ゆるぎないと確信した」と述べ、日米同盟を深化させていく決意を強調しました。
そのうえで野田総理大臣は「アジア太平洋地域は、世界の成長センターだ。一方、北朝鮮の存在は言うに及ばず、海洋を巡る争いや、軍備拡張など、チャンスとチャレンジが併存している。在日アメリカ軍の再編計画を実現し、創造的な方法で、安全保障や防衛協力を強化していく」と述べ、台頭する中国や北朝鮮を念頭に、両国が安全保障と防衛協力の強化を目指す方針を明らかにしました。
これに対して、オバマ大統領も「去年9月、われわれは、21世紀の状況に合った日米同盟になるように深化させていきたいと合意した。野田総理大臣が、その後努力していることに感謝したい。両国の共同声明の中で、日米同盟は両国の平和の基礎であるだけでなく、地域の平和と安定の要石でもあることを確認した」と応じました。
▽経済問題
日米の経済問題について、野田総理大臣は「アジア太平洋地域の経済統合の推進を通じて、両国の成長と繁栄を強化する。日本のTPP交渉参加に向けた協議を前進させていく。また、アメリカから日本へのLNG=液化天然ガスの輸出の拡大についても会談で取り上げた」と述べ、エネルギーの安定確保に向け、オバマ大統領に協力を求めたことを明らかにしました。
これに対してオバマ大統領は「日本が関心を示しているTPPについて、今後も協議を続けていくよう担当チームに指示をした。TPPは両国だけでなく、地域に繁栄をもたらすものだ」と述べました。
▽北朝鮮問題
北朝鮮問題について、野田総理大臣は「ミサイル発射のあとは、ほどなくして核実験をしており、今後も挑発行為の可能性は大きく、一層自制を求めていく。国連の安保理の議長声明に盛り込まれた措置をしっかり履行し、日本やアメリカ、それに韓国に加えて、中国、ロシアとも意思疎通し、一致して確固とした意思を伝えていく。また引き続き、中国の役割は重要で中国とも協力していくことでも認識を一致した」と述べました。
また、オバマ大統領も「これ以上挑発的なことをすれば、政治的、経済的に孤立を深めるだけだ。アメリカは、日本や韓国など周辺の国と一致して、北朝鮮が挑発的な行為から得られるものはないということを伝えていく」と述べ、両首脳は、北朝鮮が核実験を含むさらなる挑発行為をとらないよう、自制を求めていく考えを表明しました。
▽中国への対応
台頭する中国への対応について野田総理大臣は「中国は地域のパートナーという認識であることは、オバマ大統領ともお互いに確認した。私からオバマ大統領に対して、中国の発展は、わが国にも、国際社会、世界にもチャンスだということを示すとともに、日本、アメリカ、中国の戦略的対話が必要だとも伝えた。さらに、昨年の東アジア首脳会議=EASは成功だったとの認識で一致しており、アメリカが、こうした枠組みに参加することで、中国に、ルールに基づいた対応を求めていくことは大事だという意見交換も行った」と述べました。
また、オバマ大統領は「われわれは平和的に台頭する中国を歓迎している。中国が影響力を拡大するなか、強力なパートナーとして国際的な規範に従うことを求めたい。それは中国の利益にもかなうことで、われわれには、中国を封じ込める意図はない」と述べました。(NHK)
野田首相は今度の日米首脳会談を低迷している政権を浮揚させるきっかけにしたいと考えていたのは間違いない。訪米直前に産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が、合同世論調査で野田内閣の支持率が10・5ポイント減の22・0%に急落し、政権発足以来、過去最低を記録したと、衝撃的な発表をしているだけに、その思いは強かったであろう。
オバマ大統領は「野田首相は目立つ宰相(プレーヤー)ではないが、やることはやる人だ」と微妙な褒め方をしている。インパクトを欠く日本首相という印象だったから、当たり障りのない会談で終わったという見方もある。会談の内容も言葉は多いが、日米同盟を深化させたという強烈な印象にはほど遠い。訪米は失敗ではなかったが、成功というのにはほど遠いということだろうか。
<<小沢氏の党員資格復活、6割が不要 内閣支持率は最低22%>>
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が28、29両日に実施した合同世論調査で、野田佳彦内閣の支持率が10・5ポイント減の22・0%に急落し、政権発足以来、過去最低を記録した。一方、不支持率は過去最高の60・8%。菅直人政権の末期だった昨年6月下旬の調査結果(支持率23・0%、不支持率64・8%)に近く、政権運営に黄信号がともり始めた。
野田内閣の支持率が急落した背景には、北朝鮮のミサイル発射に対する政府の対応のまずさや参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相らの資質、さらに消費税増税などをめぐる党内対立の激化などがあるとみられる。
北朝鮮のミサイル発射に対する政府の情報提供では、84・3%が「万全ではない」と回答。また、82・9%が田中防衛相の資質を疑問視した。
参院で問責決議が可決された田中防衛相と前田武志国土交通相の交代を求める回答は計75・3%。「閣僚・党役員の交代は必要ない」(20・0%)を大きく上回った。
一方、東京地裁で無罪判決を言い渡された小沢一郎民主党元代表の党員資格停止処分の解除については、57・6%が「すべきではない」と答え、「すべきだ」(35・9%)を20ポイント強も上回った。小沢氏の要職起用も76・2%が「すべきではない」と回答しており、小沢氏復帰に対する国民の厳しい視線も浮き彫りになった。
消費税増税関連法案に関しては、今国会の法案成立を求める声が51・0%と半数を超す一方で、82・0%が食料品や生活必需品の税率を抑える低減税率を導入するよう求めた。野田首相が法案成立と引き換えに衆院を解散する「話し合い解散」は賛成が48・3%で、ほぼ半数。反対を約10ポイント上回った。
石原慎太郎東京都知事が表明した尖閣諸島購入方針は71・3%が「評価できる」とした。尖閣諸島を「国有化すべきだ」とする回答は84・5%に達した。
憲法改正については57・6%が「必要がある」とし、「必要はない」(30・4%)とする回答の2倍弱を占めた。(産経)
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