愛犬バロンを連れて午後の散歩に出た時である。一天にわかにかき曇り、冷たい一陣の風が吹き付けた。遠くで稲妻と雷鳴が聞こえた。以前にも同じ経験をしたことがある。私の住宅地一帯は大粒の霰(あられ)に見舞われて、家屋に被害が出た。
バロンは「帰る!帰る」とリールを引っ張る。駆け足で家に戻ったら、間一髪、大粒の霰が叩きつけるような音を立てて降ってきた。窓ガラスが割れてはいけないと、二階に駆け上がって雨戸を全部閉めた。
テレビをつけると近隣のつくば市に竜巻が襲っていると放映している。
大粒の霰と竜巻、東日本大災害では茨城県も地震と津波の被害が出たから、まさに災害銀座になった観がある。しかし竜巻は四年前の二〇〇八年三月から気象庁の防災気象情報の中で「竜巻注意情報」の発表が開始されたばかりである。
日本では、竜巻による甚大な被害が少なく他の気象災害に比べて予報の必要性が低いといわれてきた。だが、つくば市を襲った竜巻被害は空前絶後のものだった。今朝のNHKテレビが視聴者が撮影した動画で竜巻の模様を放映している。
それを見た岩手県西和賀町の玉泉寺和尚が「大丈夫か!寺の一部屋を空けておくから疎開してこないか」と電話をしてきた。バロンがワンワンと俺も行くと騒ぐ。
犬という動物は、人間が感知し得ない災害をいち早く察知する特殊能力を持っている。震度三クラスの地震でも、飛んできて椅子の下に身を隠す。「地震がくるぞ!」と予告してくれると、数秒後にガタガタと揺れがくる。
大粒の霰が降ったのもいち早く感知した。犬の警告を無視して散歩を続けていたら、ちょとした氷のカケラに打たれて怪我をしたかもしれない。
<6日、茨城県つくば市や栃木県真岡市などで竜巻や突風が吹くなどして関東地方の広い範囲で被害が相次ぎ、中学生1人が死亡したほか52人がけがをしました。
このうちつくば市では、少なくともおよそ7.5キロメートルにわたって直線状に竜巻の被害が続いていることが分かり、気象台などは7日、現地に職員を派遣して、竜巻の発生状況などについて詳しく調べることにしています。
6日午後1時前、茨城県つくば市で竜巻が発生し、北条地区など市の北部を中心に住宅が倒壊したり車が吹き飛ばされたりするなど大きな被害が出ました。
この竜巻で、中学3年生の男子生徒が倒壊した住宅の下敷きになって死亡したほか、つくば市では34人がけがをして少なくとも100棟以上の住宅が被害を受けました。
警察などのその後の調べで、竜巻の被害は、つくば市北西部の下妻市に近い吉沼地区付近から始まり、北東に向かって直線状に、西高野地区、大砂地区、水守地区、山木地区を経て、北条地区にある警察官舎の北東付近まで、少なくともおよそ7.5キロメートルにわたって続いていることが分かりました。
茨城県内ではこのほか筑西市や常陸大宮市などでも突風などによる被害が出ていて、2人がけがをして多くの建物に被害が出ました。(NHK)>
ウイキペデイアによると<竜巻(たつまき、tornado)は、積乱雲の下で地上から雲へと細長く延びる高速な渦巻き状の上昇気流。
突風の一種で、規模が小さく寿命が短い割に、猛烈な風を伴うのが特徴。地上で強い竜巻が発生すると、暴風によって森林や建物などに甚大な被害をもたらすことがあり、災害をもたらす典型的な気象現象の一つとされている>のだという。
それにしても最近の日本列島は災害が目立つ。原発が全部、稼働停止したと安心してはいけない。稼働を停止しても原発そのものは残っているのだから、大地震の直撃を受ければ福島原発と同じ被害が出る可能性を残している。
杜父魚文庫
9637 愛犬バロンの災害を感知する能力 古沢襄

コメント