9667 小沢氏裁判 輿石氏、民意軽視の果て 阿比留瑠比

もはや政権の足を引っ張るばかりの疫病神と化してはいないか。野田佳彦首相が民主党の小沢一郎元代表のグループを抑える「党内融和の象徴」として幹事長に抜(ばってき)したものの、今やすっかりメッキのはがれた輿石擢東(こしいし・あずま)氏のことである。
<<謙虚さ、恐れなく>>
小沢氏の1審無罪判決を不服として、検察官役の指定弁護士らが控訴を決めたことに対する輿石氏の反応からは国民の厳しい視線に対する謙虚さや恐れはうかがえない。まるで人ごとのように「それはそれで(指定弁護士が)そういう判断をしたんだから、それでいいじゃないですか、別に…」と語った。
日教組出身の輿石氏の政治手法は、どこまでも労組出身議員らしい。労組議員の選挙の特徴は、広く民意を引きつけ浮動票をかき集める必要がなく、身内である支持母体を固めさえすれば当選できることだ。
そのためか、発想はひたすら内向きになり、目線は特定団体・グループのみに向けられ、それ以外の民意には鈍感になりがちだ。
そもそも10日の控訴期限を待たず、党内の慎重論を押し切ってまで強引に小沢氏の党員資格停止処分の解除を決めたのは当の輿石氏だ。まるで、国民の代表からなる検察審査会の議決を受けて動いた指定弁護士に対し、「控訴しようとしまいとこっちには関係ない」と挑発するかのようだったが、その反省もない。
「まず党内が一致結束することが最優先だ」
そんな輿石氏は7日の記者会見ではこう強調した。自身の役割は党内融和だと自任しているようだが、それでは輿石氏の就任後、民主党は一枚岩にまとまってきただろうか。決してそうはなっていない。
実際には、消費税増税関連法案や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加問題、原発再稼働問題などをめぐり、党内対立はむしろ先鋭化している。輿石氏は首相を支える幹事長でありながら、小沢氏やそのグループの反執行部発言をいさめるどころか、半ば黙認してきたではないか。
<<党運営実権離さず>>
それでいて党運営の実権はちゃっかりにぎって離さない。首相は輿石氏の薦めもあり党内融和を最優先して小沢氏に近い一川保夫前防衛相や山岡賢次前国家公安委員長を入閣させたが、ともに問責決議を受け事実上更迭するはめになった。
首相は一川氏の後任には、再び参院順送りの「輿石人事」で田中直紀防衛相を任命したが、「不適材不適所」の人材としてまたも問責を受け、国会運営を一層難しくするばかり。国民もあきれ果てている。
にもかかわらず首相は今回の小沢氏の処分問題についても輿石氏に一任した。まだ目が覚めないのか。
「輿石氏は期待通りだ。その政策がいいとか悪いとか考えず、どうしたらまとまるかを考えてくれる」
首相は就任当初、周囲に輿石氏起用をこう自賛していた。だが、輿石氏の軸足はすでに小沢氏側に移っている。それに気づかないようでは首相は前任者2人と同様、何の成果もなく禍根だけ残した首相になるだろう。(産経)
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