9720 欧州の選挙がオバマ大統領を揺さぶる 古森義久

フランスとギリシャの選挙結果が欧米全体に波紋を広げています。しかしこの選挙結果はアメリカには具体的にどんな影響を与えるのか。そのへんの解説記事を書きました。 
〔ワシントン=古森義久〕フランスとギリシャの選挙での現政権側の敗北は米国にも複雑な影を投げ、熱気を増す大統領選挙にも多様な形で影響を及ぼしそうだ。
欧州の経済や財政のさらなる悪化や外交面での後退が米国にも波及して、オバマ大統領を苦しい立場に追い込む材料となるという予測が多い一方、フランスなどの有権者が緊縮財政策への反対を表明したことが共和党側の支出大削減の主張にブレーキをかけるという見方もある。
米国側のまず最初の反応はフランスとギリシャがともに財政危機解消のための緊縮財政策を掲げた現政権に有権者多数がノーを突きつけた事実から、欧州の財政危機や経済不況がさらに悪化し、その動きが米国経済の回復を阻害して、大統領選でも現職のオバマ氏に不利になる、という見方だといえる。
ワシントン・ポスト8日付は「欧州の投票はオバマ氏への不吉な兆し」という見出しの記事を載せ、「今回の選挙結果は欧州の経済危機への対処をさらに難しくし、多数の国家の財政をさらに悪化させ、世界市場を揺さぶって、米国経済のひ弱な回復をも阻害する」と論じた。
その結果、経済の回復が主要争点となる米国大統領選では経済運営の責を問われる現職のオバマ氏が不利になる、という考察だった。
USAトゥデーも8日付で「高い失業率、遅い経済成長、膨張する財政赤字、中流層の悲観など欧州の現政権を倒した諸問題は米国でも共通であり、欧州での投票結果はオバマ大統領の弱点に光をあてた」と論評した。
外交面でもフランスのオランド次期大統領の政策が米国への足かせになるとの指摘もある。ワシントンの大手研究機関AEIのダニエル・ピエトカ氏は「サルコジ政権下のフランスは中東やアフガニスタンでも米国の政策に協調的で力の行使をも含めて積極関与したが、オランド政権はずっと消極的で、とくにオバマ政権のアフガン戦略には背を向けかねない」と述べた。
オランド氏はイランの核開発阻止やシリアの民主化支援でも消極姿勢を示し、オバマ外交に支障を招く見通しが強いともされる。
他方、フランスとギリシャの勝者はいずれも政府支出を大幅に削減する緊縮財政策に反対して現政権を倒したため、共和党の大幅な緊縮策に難色を示すオバマ氏にも有利な効果を与えうる、という見解もある。「欧州での過激な財政緊縮策への反対は米国の共和党側の主張への警告に等しく、オバマ大統領にとって有利な材料ともなる」(ニューヨーク・タイムズ7日付論評)という見方である。
杜父魚文庫

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