9729 ビンラーディン殺害の真実とは   古森義久

オバマ大統領はいまの選挙戦で対外政策の最大成果の一つとしてアルカーイダの最高指揮官ウサマ・ビンラーディンの殺害をあげています。
しかしオバマ大統領の述べることは事実と異なると、対テロ闘争で実際に戦った人物が主張しました。さあ、真相はどうなのか。
〔ワシントン=古森義久〕CIA(米国中央情報局)のテロ対策の実務責任者だった人物が国際テロ組織のアルカーイダ最高指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者の殺害についてオバマ大統領が反対したブッシュ前政権時代の捜査方法が機能したからこそ成功したという一連の情報をこのほど新著などで暴露した。同大統領は選挙戦でも同容疑者殺害を対外政策の最大成果と誇っており、この暴露はその誇示への挑戦となった。
CIAに2008年まで32年間、工作員、捜査員として勤務し、2001年の同時中枢テロ事件の後はCIAテロ対策本部長をも
務めたホセ・ロドリゲス氏は5月はじめに出版した「強硬措置・9・11後、CIAの果敢な行動がいかに米国民の命を救ったか」という新著や一連のメディアでの言明でビンラーディン容疑者の追跡の過程を明らかにした。
同書などによると、同容疑者発見への決定的な端緒は2004年に拘束したテロ容疑者の「ビンラーディン氏はもう電話やインターネットでの交信を一切、断ち、単独の伝令にすべて頼っている」という自供だった。当時、CIAテロ対策本部長だったロドリゲス氏らはこの容疑者を米国外の秘密収容所で「補強尋問」により調べた結果、その伝令が使っている仮名まで供述させた。
その後、CIAはこの伝令の発見に全力をあげ、2007年ごろには同伝令の実名や身元をつかみ、テロ重大容疑者を拘束するグアンタナモ収容所の収容者たちからの尋問結果をも基礎にビンラーディン容疑者の動向の一端を察知して、追尾を重ね、同容疑者の隠れ家にたどりついたという。
ロドリゲス氏はこの「補強尋問」は「水責め」と呼ばれる尋問も含むが、拷問ではなくブッシュ前政権時代に大統領と議会超党派の承認を得た合法的手段だと主張している。
ところがオバマ大統領は2009年1月に就任してまもなく、海外のCIA秘密収容所の閉鎖と補強尋問の禁止を命令し、グアンタナモ収容所の閉鎖をも言明した。このうち同収容所の閉鎖だけは同大統領は撤回したが、ロドリゲス氏は「ブッシュ前政権時代の秘密収容所と補強尋問を使っての重要情報入手がなければ、ビンラーディン容疑者の殺害はできなかった」と述べ、オバマ政権が同容疑者の殺害を自政権だけの政策の成功として宣伝するのは事実をゆがめていると強調した。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました