9731 自民 内閣不信任、首相問責案提出も? 古沢襄

「三筋の綱引き」の続きになる。国会の膠着状態に業を煮やした自民党の衆参国対委員長が、内閣不信任決議案(衆院)や首相問責決議案(参院)の提出を含め野田政権に厳しく対応する方針で一致したという。
まず内閣不信任決議案だが、衆院で可決された場合、内閣は自分達に不信任を突きつけた衆院を当日から九日後までに解散するか、解散しない場合は内閣総辞職をすることが憲法上義務付けられている(憲法第69条)。
衆院は480議席。与党の民主党は290議席、野党の自民党は119議席、公明党は21議席だから、算術計算をすれば内閣不信任決議案が可決される可能性はない。
もし民主党の小沢グループが造反して内閣不信任決議案に賛成票を投じたらという”タラ・レバ”の話だと、60票の票が動いただけで内閣不信任決議案が可決される計算式が成り立つ。
与党議席296ー造反60=236
野党議席184+造反60=244
この”タラ・レバ”計算式が成り立つ可能性は、まずないだろう。野田内閣は総辞職せずに解散・総選挙に踏み切るだろうから、選挙になれば一年生議員が多い小沢グループが不利となる。みすみす負け戦になる選択肢を小沢氏がとる筈がない。
消費増税法案が衆院本会議に上程されて、票決を求められた場合でも、”タラ・レバ”計算式だと60票の造反で消費増税法案が葬り去られる。この場合でも野田首相は迷わずに解散に踏み切り、選挙で国民の信を問うだろう。
小沢氏と小沢グループにとっては、来年夏の衆参ダブル選挙が最善の策だといえる。野田首相にとっても内閣支持率が20%台で低迷している時期の解散・総選挙は、かなりのリスクを伴う。だから小沢氏と腹を割って話合いたいということになる。
参院の首相問責決議案はどうか。
参院は与党系110議席(民主105)に対して野党系132議席(自民83,公明19,みんなの党11)だから、首相問責決議案は可決される。しかし法的拘束力のない「国会決議」という形式の問責決議だから首相は辞任する必要はない。
こうみると、自民党が振りかぶった内閣不信任決議案も首相問責決議案も野田首相を追い込む決め手にはならない。額賀福志郎氏がいう「消費増税も社会保障の中身も決められず、解散もできない事態は最悪」という局面が一番可能性あり、という皮肉な事態が近づいたといえる。
<自民党の岸田文雄、脇雅史衆参国対委員長は18日、国会内で協議し、野田佳彦首相が前田武志国土交通相ら問責2閣僚を交代させなければ、内閣不信任決議案や首相問責決議案の提出を含め、野田政権に厳しく対応していく方針で一致した。
自民党は、消費増税関連法案成立への協力と引き換えに、衆院解散を約束させる「話し合い解散」を探っている。しかし、首相が2閣僚更迭に応じようとしないため、けん制を強めた格好だ。谷垣禎一総裁も17日に不信任案提出の可能性に言及していた。 
脇氏は岸田氏に、参院に首相問責案を提出する場合、(1)衆院で消費増税法案を否決すればその時点(2)6月21日の会期末-の2パターンを想定していると伝えた。岸田氏はこの後の記者会見で「残りの会期1カ月、首相がどこまで責任を果たすのか見極めた上での判断になる」と述べた。(時事)
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